今回のコラボ書評は筒井康隆さんの『残像に口紅を』を取り上げます。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評は新川帆立さんの『元彼の遺言状』でした。
【コラボ書評】強気な弁護士が活躍するミステリー:新川帆立『元彼の遺言状』 – つぶログ書店
元彼の遺言状(新川帆立)のネタバレ感想!元彼から遺産をもらえたら嬉しい? | 坂本、脱藩中。
コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店

今回の本は筒井康隆著『残像に口紅を』

今回のコラボ書評の課題本は筒井康隆さんの『残像に口紅を』です。
筒井さんの作品は読んだことがあり、この作品の存在は知っていました。
最近は芸能人がおすすめとしてあげていたり、TikTokでも話題となっているそう。
@kengo_book これぞ文学の良さ。たまらん。#本の紹介 #おすすめの本 #小説 #小説紹介
♬ 無音 – High-Resolution Raboratory
30万部突破とのことで、本当にすごい。
筒井康隆さんのような巨匠の作品ががSNSをきっかけにスポットライトが当たるのは面白い現象ですね。
『残像に口紅を』のあらすじはこちら。
「あ」が消えると、「愛」も「あなた」もなくなった。ひとつ、またひとつと言葉が失われてゆく世界で、執筆し、飲食し、交情する小説家。究極の実験的長篇。
この本を読んで感じたこと
この本では一字ずつ音(おん)が消えていきます。
例えば、「ほ」が消えたら、本(ほん)という言葉、存在が世界から消えていくという。
面白いのはこの設定は主人公である、作家の佐治勝雄が書いている小説であるという部分です。
世界から音が消えていくことに自覚的なんですね。
モブたちは音が消えて、モノや人が消えることに戸惑っていますが佐治は楽しんでいたりする。
このメタ視点が面白い。
1字ずつ音が消えていくときのルールは、本書の冒頭に佐治が友人の評論家、津田徳治が話し合って決めたものです。
実験的とは言いつつも笑ってしまうような部分もあり、あらすじにもあったように恋愛というか愛についての本でもあります。
失われるから価値がわかる、というイメージでしょうか。
後半どんどん音が失われると通常の小説のようには展開できず、ドタバタ喜劇(スプラスティック)的な感じになります。
それはもう、笑ってしまうように。
この小説は引用しても面白さを伝えにくいというか、伝わらないというか。
一字ずつ音が消えていく世界なのでそれを体験するように読むのがいいかもしれません。
まとめ
実験的かつ面白い。
ぜひ、巨匠の作り上げたメタフィクションを楽しんでください。
おすすめ!
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さかもとさんの書評はこちらから
この作品をさかもとさんはどう読んだのでしょう。
書評はこちらから。
残像に口紅を(筒井康隆)を若者はどう読んだのだろうか | 坂本、脱藩中。