毎月お送りしているブログ「坂本、脱藩中」のさかもとみきさんとのコラボ書評です。今回の本はよしもとばななさんの『鳥たち』です。
月イチのコラボ書評!
毎月一回、同じ本を読んでコラボ書評を書き合うオトコとオンナのホンノ読ミカタシリーズです。
コラボをしてもらっているのはブログ「坂本、脱藩中」のさかもとみきさんです。
毎月順番に本を選んで次の月までに読んで書評をコラボする。
このコラボを始めて毎月本を読むのが一層楽しくなった気がします。
お互いの書評を一番に読むというのも楽しみの一つ。
何よりも同じ本を読んでも捉え方、上がってくる書評が全く違うので毎回さかもとさんの書評を読むのが私自身楽しみです。
ちなみに前回のコラボ書評はこちら。
取り上げたのは飛鳥井千砂さんの『そのバケツでは水がくめない』です。
今月の本は?
この作品Kindle版もあるんですが、それは単行本をKindle化したもの。
そのため文庫本が519円なんに対し、Kindle版は1000円以上です。これだけ価格差があるのでこだわりがない人は文庫本をおすすめしますよ。
ぼくは恥ずかしながらよしもとばななさんの作品を読むのは初めて。
どんな作品なんだろうとワクワクしながら本を読み進めました。
あらすじを貼っておくとこういう感じです。
それぞれの母親を自殺で失った大学生のまことパン職人の嵯峨。
まこは日々、喪失感に怯えては嵯峨の子を欲しがり、そんなまことを嵯峨は、見守っている。
お互いにしか癒せない傷を抱えた二人。少しずつ一歩ずつ、捕らわれていた過去から解き放たれ、未来へと飛び立っていく。
大人になる直前の恋と、魂の救済の物語。
鳥たちの感想。
この作品はこの作品を読んで感じたことは主人公の2人、まこちゃんと嵯峨がそのやり取りも含めてどこか現実離れした雰囲気を持っていることです。
もちろん、小説だからということではなくて現代の日本を舞台にしているにもかかわらずいい意味でリアルとは少し外れた性格が見え隠れしていたのです。
前回コラボ書評で取り上げた伊坂幸太郎の作品は人物は割と物語を動かす装置と言うか軽めの雰囲気を持っていますが、この作品からもそれに近い雰囲気を感じました。
もちろんストーリー展開もテーマも全く違います。
筋にあるようにこの鳥たちの作品はまこと嵯峨の母親が死んでいるなど濃厚に死の雰囲気を漂わせています。
伊坂幸太郎の作品にも犯罪の雰囲気で人が死ぬことはありますが、今回読んだ作品の方が痛みというか、そういうものを感じました。
しかしそれでいてよしもとさんが登場人物たちを突き放しているかのような印象を受けました。
登場人物は次第に希望の光を見つけていくという展開ですが、なんだか印象としては寓話的な印象が近いですね。
この点は不思議ですが読者が「こういう人いるいる!」と共感するというよりは現代の日本から多少はリアリティのラインを落としても表現したいことを優先してこのようなスタイルをとっているのだと感じました。
よしもとばななさんの作品を読むのはこれが初めてでしたが徹底してリアリティーを持って現実を描ききるというよりは自分の表現したいことを伝えられる世界を登場人物を作ると言う形でしょうか。
強い結びつきを持った2人のグループになると周囲の人がなかなか入っていきにくい面があります。
この作品ではそういう世界を表現したかったのではないかと感じましたね。
死によって2人を結びつけそこからどのように世界が見えるのかということを表現したかったのではないかと。ほかの人物やものはこの世界を表現する装置になっています。
私が読んだのは文庫本で薄い本ですが、思いのほか時間がかかりました。
それはこの世界観になじむのに時間がかかったからかもしれません。
薄いけど、重たい本。しかしどことなく軽みのある。
この本が好きになるかはある意味、まこと嵯峨の2人のことを好きになるかということと同じです。
さかもとみきさんの『鳥たち』の感想
さかもとみきさんの書評はこちら。
死と向き合い、死者の幸福を祈り、死を乗り越える少女の物語「鳥たち」よしもとばなな | 坂本、脱藩中。
ぜひ読んでください!
まとめ
この本を読んでふと思い出しのは村上春樹の『ノルウェイの森』でした。
語彙がなくてうまくいうことはできないんですが、作品全体に漂うドライというか寒々とした感覚が近いなと。
私は小説を読むのは、作家の目を通して世界を見ること、視線を獲得することと常々言っているんですが、また新しい世界の見方を得ることができて嬉しい気持ちです。
よしもとばななさんの目を通して世界を切り取るとこんな感じなんだなと楽しめるはずです。
ぜひ、読んでみてください。
今回紹介した本
ちなみにKindle版はこちら。鳥たち (集英社文芸単行本) Kindle版
紙ですが文庫版の方が500円以上安いのでご検討ください。