【コラボ書評】人生で唯一確実なものがトラブルだ。:トム・ジョーンズ『コールド・スナップ』

コールドスナップ 書評

毎月連載しているブログ坂本、脱藩中。さかもとみきさんとのコラボ書評。今回はアメリカの作家、トム・ジョーンズの『コールド・スナップ』を取り上げます。

毎月書いているコラボ書評

毎月お送りしているブログ坂本、脱藩中。さかもとみきさんとのコラボ書評です。

なんと今回で10回目です。

前回はアガサ・クリスティーの『春にして君を離れ 』を取り上げました。

書いている自分自身も楽しみなこのコラボ書評。

今回取り上げるのはさかもとさんの選んだ本で、トム・ジョーンズ『コールド・スナップ』です。

ミステリーではない海外文学を読むのは久しぶり。どんな作品なのでしょうか。

では見ていきましょう。

トム・ジョーンズとは

その前にトム・ジョーンズはどんな作家でしょうか。

トム・ジョーンズは村上春樹が敬愛している作家として知られています。

アメリカ人で、1945年の生まれ。

長編は書かず、短編のみを好んで書いている作家です。

日本語に翻訳されているのは、今回紹介する『コールドスナップ』を含めて、わずかに4作品だけ。

しかし、『コールドスナップ』の翻訳は作家の舞城王太郎。

そのほか著名な翻訳家の岸本佐知子が翻訳を手がけるなどプロの心を揺さぶる作家だと言えるでしょう。

初めてのトムジョーンズを、舞城王太郎の翻訳で

トムジョーンズの作品は読んだことはありませんでした。

翻訳者の舞城王太郎は専業の翻訳者ではなく、よく知られた作家です。

ぼくは恥ずかしながら、舞城作品は読んだことがなかったのですが、表紙はAmazonなどで見たことがありました。

きっと同じような人はいるのではないだろうか。

『好き好き大好き超愛してる。 』とか『コールドスナップ』に出てくるような過剰なタイトル。

そういえば、舞城王太郎はジョジョの奇妙な冒険のスピンオフ小説も書いていました。

書店で見かけたときはその分厚さにおののいたものです。

作品の印象について

さて、『コールドスナップ』について。

出だしから快調で、ギクッとさせられる。

クソったれのボケってなもんだ。急な寒波(コールド・スナップ)がやってきたから俺はおらーっと家中の水道を流しっぱなしにする。

いきなりクソッたれというのもなかなかいいが、おらーっというのも勢いがあって、なんだかわからないけどいい。

この本を読んでの感想

一言、どうしようもない人ばかり出てくる小説ということができます。

作中にドストエフスキーについて言及するセリフがありますが、同じくらい登場人物たちは饒舌です。

この点は齋藤孝の『過剰な人』という本を読めばよくわかります。

ドストエフスキーの『罪と罰』などの作品を読んだときに、出てくる人物の饒舌っぷりに驚いた人もいることでしょう。

この作品は、病気で、酒で、薬で、いろいろな意味でいっちゃってる人びとのサーカスのような小説です。

お前の考えなんて妄想に過ぎないし、そんなことでうじうじしててもどうしようもないんだぜ。お前は単にお前特有のフョードル・ドストエフスキー的感傷にはまってるだけなんだ。いいからお前自身のためにもそんなの忘れちまえ!

必ずしもアメリカが舞台になっているわけではないけれど、タランティーノの映画に出てくるようなダメダメな海外が出てくる。

そういえば、タランティーノの映画もしゃべりまくる作風でしたね。

アメリカ人の書いた小説だから、当たり前といえば当たり前ですが、なんとなく共通点を感じました。

もちろん、タランティーノ作品のような暴力がこの短編集で描かれているわけではありません。

しかし、アフリカのうだるような環境を描いていながらも、もめごとや、うんざりするようなやり取りを描いていながらも、どこかドライ。

ぼくの読書遍歴ではこの作品のようなタイプの作品はあまり読んだことはありません。

日本人作家でもあまりいないはず。

日本映画でもそうですが、日本の作品だと「私小説」の系譜があるので、この短編集のようなテーマを扱うと”湿っぽい”ような感じになってしまうはず。

同じアメリカ発の映画でもハリウッド映画もあれば、自主制作映画もあるようにそれぞれ違いが出てきます。

自分の経験したこと、自分の知っている世界、そういうものをテーマにしながらもこういう仕上がりになってくる。

そういうところが面白いと感じました。

まとめ

この作品は、のっけから物語はよどみなく展開されます。

「クソッたれ」というセリフから短編集が始まるように映画のような小説です。

短編集だけに一つひとつの作品は長くはないものの、切れ目なく物語が展開するため、いつの間にか作品の世界に入り込んで行きます。

作者が意図したものかはわかりませんが、現実と作品の境界が曖昧になるという感じです。

舞城作品は読んだことないものの、おそらくこの個性を生かすように翻訳したのでしょう。

没入するような読書体験。

ぜは、読んでみてください。

聖なるジーザスの御心に栄光と、賞讃と、愛情がありますように。世界中に届きますように。今と、そして永遠に。聖なるジーザスの御心よ私たちのために祈り 賜え。聖人タダイよ、奇跡の起こし主よ、私たちのために祈り賜え。聖人タダイよ、絶望しつる者を助け、私たちのために祈り賜え。アーメン。

さかもとさんの書評

さかもとさんの書評はこちら。

一緒にコラボしていながら、毎回勉強になります。

今回紹介した本

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