城を「壊す」という歴史とは:福田千鶴『城割の作法』

城割の作法 shirowari 書評

福田千鶴さんの『城割の作法』を読みました。

城割の作法とは?

最盛期には全国に何万もあったという“城”ですが、往時のまま残っている城はあまりない、というのが現状です。

その理由としては、もちろん戦災もありますが、大名などが自ら城を破壊する「城割」によるということもあるのではないでしょうか。

居城以外の城を破却するように命令した「一国一城令」は有名ですよね。

著者の福田千鶴さんは、

城を壊すことには、「わる(破る)」と「たたむ(捨てる・畳む)」があるとした上で、

エヴォラのような中世城壁都市の遺構を日本国内でみつけることができないとすれば、日本には城壁を壊すという固有の歴史があったのではないかと考えざるをえなくなる。これが本書の問いかけの核心にある。つまり、城割の歴史である。

という問題提起をしています。

一国一城令による城割以外にも、戦国期には降参の作法として城を壊す(自破)、あるいは敵が破棄した城を武装解除させる目的や浄めるために更地にする(たたむ)ということも行われていたようです。

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福島正則の改易について

城割の中で、一番有名な事件は「福島正則改易事件」ではないでしょうか。

本書の第5章では福島正則の改易事件の経緯が考察されています。

ご存じない方のために簡単に説明すると、関ヶ原の合戦の軍功により、安芸・備後両国を得た福島正則が武家諸法度の城の無断修築をとがめられて改易されたものです。

この改易自体が、豊臣系大名の力を削ぐための幕府の陰謀だ、などという説明が広く信じられてきたのですが、近年これを否定する研究が出てきています。

徳川幕府の大名改易政策を巡る一考察-1」-国際日本文化研究センター学術リポジトリ

つまり、陰謀ではなく、正則が幕府のルールを遵守しなかったことによる、正当な改易だったということです。

最初は届けなく城の修繕を行い、それが問題視されたことがそもそもの始まりです。

正則が秀忠に詫びを入れ、秀忠としても城割をすれば許すというところまで行っていたので、是が非でも改易をする、という流れでもなかったようです。

しかし、福島正則家中が行った城割が幕府の意向に沿うものではなかったことが、秀忠の耳に入り、怒りを買い改易に至りました。

幕府は「一国一城令」を受けて確立した近世的な破却(本丸をのぞきすべての建物を壊す)を求めたのに対し、正則は戦国期の城割に基づき“上石ばかり”を破却したということです。

つまり、改易の真相は“城割に関する認識のズレにあった”ということのようです。

まとめ

この本を読んでの素人考えを書いてみると、幕府の意向は“戦時体制”の解除にあり、各大名に預けてた戦時体制の権限を回収して、幕府が一元的に行使するという体制を構想していたのではないかと思います。

城割の歴史から、有名な一国一城令についての検討まで城割について総合的に学ぶことができる1冊です。

軍事的な面から見た“戦の時代”『戦国の軍隊』 | つぶログ書店

今回紹介した本

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