最近読んで面白かった本を紹介します。『徳川将軍家の演出力』という本です。
江戸時代が続いた秘密
最近よく江戸時代の本を読んでいます。
そんな中偶然ネット検索をしていたところ面白い本に出会いました。その名も『徳川将軍家の演出力』です。
江戸幕府が250年以上続いたことはよく知られた歴史的事実。
個人的に不思議だったのはなぜそれだけ長く支配を続けることができたかということです。
制度や仕組みなどいろいろ理由があるのかもしれませんが、この本を読んでいくつかのことが腑に落ちました。
重要なのは権威。
大事なのは姿を見せないこと?
『幕末の将軍』という本にも書いてありましたが幕府は大名をさまざまな儀式などに組み込むことによってついにはその支配を精神的なところまでに及ばしたということですね。
将軍の権威を演出する上で大事なのは姿を見せないこと。
将軍の姿を直接見られる者はきわめて限られていた。というより、将軍の存在を限りなく遠いものにする。つまり、その姿を見せないことで、将軍の権威(御威光)は保たれていた
現代の日本に生きる私たちはたとえ天皇陛下でも首相であろうとその姿を見ることができます。
しかし、江戸時代将軍の姿を見ることができたのはほんの限られた人たちだけでした。
そもそも将軍の顔を見知っている者など、ほとんどいなかった。当時の日本の総人口は約三千万人だが、千人ぐらいしかいなかっただろう。
これは一国丸ごと支配している国持大名でも同じことでした。将軍に拝謁するときはその姿を見ることができず会話することさえできません。
江戸城で執り行われる厳格な拝謁儀礼、そして御成空間での息の詰まるような作法をみてきた。こうして、将軍は限りなく遠い存在に転化し、ついには神格化されるに至る。
将軍の存在
将軍も江戸城の外に外出することがありますがその際には窓を閉めて隙間には目張りをしなければいけませんでした。
火を焚くことも許されていませんでした。
このほかこの本には面白い事実もたくさん書かれています。
たとえば毎年大名は将軍に贈り物をするわけですが、それは刀と馬でした。
でも実際に実物を献上するわけではありません。刀はたくさんあっても困るからか木刀でしたし、馬は代わりの金子でした。
そのほか折に触れて献上品を出すわけですが、それらの多くは将軍に渡ることはなく売られたり江戸城の役人たちのものとなっていました。
相撲が人気を博した理由の一つが将軍による上覧相撲だったこと。
江戸っ子は将軍のお膝元に住んでいることを誇りにしていたんですね。
将軍の存在がいかに大きかったかということがわかるエピソードがたくさん書かれています。
個人的に面白かったところ
江戸時代初期は戦国の気風も残っていました。そのため支配を強固にするため武断政治を行ったりしたわけですが、平和な時代が長く続くことによって軍事力で大名を支配することが難しくなってきました。
そこで生み出されたのが将軍の権威を高めるということだったわけです。
将軍が大名の屋敷を訪問することを御成といいますが、この時には将軍が出入りするための門をわざわざ作ったほど。
この門、御成門といいますが将軍以外に使う人はいません。
それだけ将軍の権威が高かったとともに忠誠心を見せる機会になっていたことでしょう。もちろん他の大名との競争心もありました。
平和な時代にはいかに将軍に近づくかが家の格を高めるかに重要だったんですね。
まとめ
偶然出会った本ですが久しぶりのヒットでした!
個人的に疑問に思っていたことが書かれていて楽しく読むことができました。
当時の証言も引用されているので手軽ながらその場にいるような感覚になります。
この本はAmazonでは品切れとなっていてKindle版しか手に入りません。新書で読みやすいので江戸時代に興味があったらぜひ読んでみてください。
おすすめです!