今回のコラボ書評は今村翔吾『塞王の楯』を取り上げます。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評は乗代雄介さんの『皆のあらばしり』でした。
【コラボ書評】歴史少年とうさんくさい男の邂逅:乗代雄介『皆のあらばしり』 – つぶログ書店
皆のあらばしり(乗代雄介)さらっと読めるのにセリフが刺さる! | 坂本、脱藩中。
コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店

今回の本は今村翔吾著『塞王の楯』

今回のコラボ書評の課題本は今村翔吾さんの『塞王の楯』です。
今回は私つぶあんが本を選びました。
『塞王の楯』のあらすじはこちら。
幼い頃、落城によって家族を喪った石工の匡介(きょうすけ)。
彼は「絶対に破られない石垣」を作れば、世から戦を無くせると考えていた。
一方、戦で父を喪った鉄砲職人の彦九郎(げんくろう)は「どんな城も落とす砲」で人を殺し、
その恐怖を天下に知らしめれば、戦をする者はいなくなると考えていた。
秀吉が病死し、戦乱の気配が近づく中、
匡介は京極高次に琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。
攻め手の石田三成は、彦九郎に鉄砲作りを依頼した。
大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、信念をかけた職人の対決が幕を開ける。
今村翔吾『塞王の楯』- 集英社
惜しくも受賞はならなかったですが、第166回直木賞受賞作。
この本を読んで感じたこと
タイトルともなっている“塞王”とはなんなのか。
穴太衆の中で当代随一の技を持つ者が塞王の称号を名乗ることになっていた。
つまり、石垣を積む職人集団の中で伝説的な存在のみが名乗ることができる称号ということです。
本作では事実上の主人公である匡介(きょうすけ)が属する近江(滋賀県)の穴太衆(あのうしゅう)を中心に物語は展開します。
穴太衆は合戦の舞台となる城の石垣を積む職人集団です。
ライバルとして登場するのが同じ近江の国友衆(くにともしゅう)です。
国友衆は鉄砲をつくる職人集団です。
石垣を積む職人である匡介は守ることで。鉄砲を作る職人である彦五郎は攻めることで戦のない平和な世の中を作ろうとしています。
絶対にやぶれない石垣と最強の鉄砲との戦いということで、まさに“矛盾(楯)”をめぐる対決になります。
戦国時代が舞台だが登場人物たちの関係性、性格は現代的な感じなので読みやすいですね。
(そういえば武将以外の人物の名前も現代っぽいですね。匡介、夏帆など)
最終的に物語は天下分け目の関ヶ原の合戦に付随して行われた大津城の戦いに
国友衆の は攻める側(西軍)として、穴太衆の匡介は城にこもる側として。
大津城の戦いに物語が突入すると、グッと展開がスピーディーになります。
最終的にどうなるのか。
関ケ原の戦いはすごく有名ですが、その中の合戦のひとつである大津城の戦いを物語の最終舞台に選んだのも渋いなと思います。
歴史ファンにこそよく知られているものの、一般的な知名度はそこまでではないイメージが合ったので。
だからといって歴史好き、知識がないと楽しめないということはないので心配ありません。
穴太衆や戦国の合戦についての話ですが、ちゃんとエンターテイメントとして満足できるつくりになっています。
本書はこのコラボ書評をはじめてから一番厚い本かもしれません。
とはいえ熱い展開が続き、スルスルと読ませる作品なので楽しんで読むことができます。
まとめ
大津城の戦いは歴史的な出来事としの決着はついています。
でも読んでいるとそんなことは忘れるくらい面白いです。
矛と楯をめぐる戦いを実際に読んで確かめてください。
ぜひ読んでみてください。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店
さかもとさんの書評はこちらから
この作品をさかもとさんはどう読んだのでしょう。
書評はこちらから。
今村翔吾「翁の盾」絶対破られない石垣を見に行きたくなる戦国小説 | 坂本、脱藩中。