毎月連載のコラボ書評。
今回のテーマ本は加藤シゲアキさんの直木賞候補作『オルタネート』です。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評は早瀬耕の『グレート・ギャツビーを追え!』でした。
村上春樹が訳す文芸ミステリー!『「グレート・ギャツビー」を追え』 | つぶログ書店
設定・関係性全てが読書好きにはたまらない!「グレート・ギャッツビーを追え」ジョン・グリシャム | 坂本、脱藩中。
コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 |

今回のテーマ本は加藤シゲアキ著『オルタネート』

今回のテーマ本は加藤シゲアキさんの『オルタネート』です。
今回は私つぶあんが本を選びました。
こちらが『オルタネート』のあらすじ。
高校生限定のマッチングアプリが必須となった現代。3人の若者の運命が、鮮やかに加速していく――。ある「事件」により、誰にも明かせぬトラウマを抱える蓉。母との軋轢を機に、絶対真実の愛を求め続けるオルタネート信奉者の凪津。高校中退後、「亡霊」に導かれるがまま、かつてのバンド仲間を求めて、大阪から上京した尚志。出会いと別れ、葛藤と挫折、そして苦悩の末、訪れる「運命」の日――。恋とは、友情とは、家族とは、人と“繋がる”とは何か。青春のおわりと新たな旅立ちを、真っ向から描ききる、NEWS加藤シゲアキ、3年ぶりの最新長編。
加藤シゲアキ『オルタネート』新潮社公式サイト
本作は第164回直木賞の候補になっています。
この本を読んで感じたこと
加藤シゲアキさんの小説を読むのは初めてです。
言わずと知れたジャニーズのアイドルNEWSのメンバーであり、過去何作も小説を出版し評価されている作家でもあります。
これまでも現役アイドルながら作家としてデビューしていることは知っていたし、作品を書店や図書館で見かけたこともあります。
これまで読んだことがなかったのは本当にたまたまで、手に取る機会がなかったんですね。
今回は本を選ぶにあたって「直木賞候補になるくらいだから、面白いんだろうか、どんな感じだろう」と思い、読み始めました。
読みやすい、読みにくい、というレベルではなく夢中になって読むことができました。
マッチングアプリを巡る青春群像劇ということで、やっぱり最大のポイントは登場人物たちが使っているアプリです。
本に登場するアプリが自分の高校時代にもあったら…
アプリの名前は「オルタネート」。
オルタネートは高校生の入学式から卒業式までしか使えないアプリです。
オルタネートとは?
高校生限定のSNSアプリ。個人の認証が必要で、利用条件は高校の入学式から卒業式までと定められている。お互いが〈フロウ〉を送り合うことで〈コネクト〉となり、メンバー同士の直接のやり取りが可能となる。また、ユーザーが指定した条件に合わせて相性のいい人間をレコメンドする機能、ブログを投稿できるSNS機能を持ち合わせ、高校生必須の人気アプリとして確固たる地位を築いている。
加藤シゲアキ『オルタネート』新潮社公式サイト
新潮社の『オルタネート』公式サイトにアプリとしての「オルタネート」の説明が書いてありました。
この本を読んで思ったのはオルタネートってmixi的要素がある、ということ。
TwitterともInstagramとも違っています。でも申請を受け入れるという部分ではFacebookみたいだったり。
またLINEともすこし違う部分があります。
そして「マッチング」という部分が物語の一つのテーマにも関わってきます。
物語の中で自分の遺伝子情報を提供することでより精度高いマッチングをすることができる機能が追加されたりもしました。
現実社会でもマッチングアプリを使うことが普通になってきました。
人間関係の変化、つながりなどの要素も加味されたのかもしれません。
加藤さん自身はフィクションだけど、この物語は僕の物語です、と言っています。
ぼくは今でこそTwitterなどSNSを使っていますが、ぼくの高校時代はギリギリSNS普及前。
大学のころにようやくmixiが出てきたくらいです。
加藤さんは割とぼくと年が近いので、もちろん一般人と芸能人という違いはあれどSNSに関する認識に共通する部分も少しはあるのかもしれません。
現代的な要素と自分の青春を掛け合わせるとどうなるのか、という部分から発想していったのかもしれないと思いました。
高校のころにこういうアプリがあったらどんな感じの高校生活になっただろうかと思ったります。
印象に残った部分
印象に残ったのは高校生が出演する料理番組「ワンポーション」のパートです。
これは全国で配信される料理コンテストで、ここに登場するのは表紙にも出ている蓉(いるる)です。
ほかにも「オルタネート」にハマる凪津(なづ)、高校を中退し友人に会うために上京しシャアハウスに潜り込む尚志(なおし)がメインとなる登場人物です。
それぞれのパートが少しだけ関わりながらも、「オルタネート」を中心にしてそれぞれの高校生活が描かれています。
本作はビターな読み味という感じで、青春小説の王道からちょっとヒネった感じになっているのも特徴の一つかな、と思います。
まとめ
それでいて、青春小説らしい葛藤も描かれています。
自分自身だったり、家族、友人、学校、将来、高校のころはいろいろな可能性がありますが、それだけにもやもやした感情が個人的にはあったのでそれがすごく自然に表現されていると感じました。
果たして加藤さんは又吉直樹さんが『火花』で芥川賞を取って以来の直木賞受賞を果たすことができるでしょうか。
さかもとさんの書評
さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。
さかもとさんの書評はこちらから。
近未来の恋の形?データで恋は成就するのか「オルタネート」加藤シゲアキ | 坂本、脱藩中。