かつては城といえば、天守があるようなところに注目が集まりがちでした。
しかし、最近は一見地味な戦国時代の土づくりの城に注目が集まっているそうです。
戦国武将たちの攻防の舞台となった城への入門書を紹介します・
戦国の城入門の書!
近年歴史ファンの増加にともなって城を好きになる人が増えているそうです。
ぼくもその1人で現存天守のような城だけではなく、近江の小谷城などを訪れています。
今回紹介するのは城好きにはおなじみの「城メグリスト」荻原さちこさんの著書、『地形と立地から読み解く「戦国の城』です。
この本の序文でも言及されていますが、かつて城といえば「天守」というイメージがあって、いまではだいぶ変わってきたとはいえ城といえば「天守」という人も多いはず。

高知城天守閣
しかし、日本に3万から4万もあったとされる城のほとんどは土づくりの城なのです。
人気の高い戦国時代にはこれらの城をめぐる攻防が繰り広げられていたわけで、城好きになったら戦国の城こそ楽しくなってくるのです。
本書でも詳しく書かれていますが、戦国の城は国でいう国境に境目の城を築き、領域内には支城と呼ばれるネットワークを張り巡らして領土を守っていました。
この本では城の基礎知識から、支城、境目の城についての知識、実際にどのように運用されていたか、はじめての人でもわかりやすく書かれています。
中心となる本城、本城を支える支城にわかれますが、会社に例えると本城は本社、支城は支社になります。
会社が組織だって収益をあげたりするのと同じように本城を中心として役割を持った支城のネットワークを駆使して戦国大名は生き残りをかけていたのです。

小谷城に残る石垣
織田信長が構築し、活用した支城網
織田信長は近江に長浜城、佐和山城、安土城、坂本城のネットワークを構築したりしました。
ぼくは織田信長と争った近江浅井氏の小谷城が好きなんですが、小谷城も領域内に支城を構築し守備をしていました。
浅井氏滅亡のきっかけとなったのは支城のひとつである山本山城の阿閉貞征が寝返ったことであり、その知らせを聞いた信長はすぐさま近江に軍勢を派遣しています。

小谷城の光景
織田軍が布陣したのは小谷城からわずかな距離にある虎御前山です。

小谷城から見た織田家が布陣した虎御前山
戦国時代が城をめぐる領域の争いであるということの一例です。
秀吉が中国攻めの司令官になり、毛利氏と対峙したときも支城網を崩す形で対決していっています。
備中高松城の水攻めはあまりにも有名ですよね。
城にはその場所にある理由があり、かならずドラマがあります。
戦国武将の戦略を推理するとともに、そのドラマに思いをはせてみるのも楽しいですね。
城のとらえ方は時代によって異なる
日本に3万から4万もあった城も江戸時代に入り、一国一城令が布かれると破却されたりします。
いまでこそ城といえば天守があって御殿がある平地に気づかれた平城、小高い山に築かれた平山城ですが、山城がメインであったときもあったのです。
われわれが普通にイメージするような城はほとんど20年くらいの期間に築かれたもの。
当然ながら城自体の歴史はもっと長く戦国時代だけでとらえても天守が築かれるような城よりはずっと長いのです。

彦根城
いま天守のあるような城だけではなく、戦国の山城にも注目が集まっているそう。
数多の攻防が繰り広げられた戦国時代のほとんどの舞台は戦国の城といってもいいはず。
本書を片手に地図を眺めてみればきっと城の楽しさを学ぶことができるでしょう。
まとめ
武田信玄が、上杉謙信が、毛利氏が、北条氏がどういう風に境目の城を築き、防衛していたのか、逆に攻める側はどういう風にそのネットワークを突破していたのか知ることができるのが本書のいいところです。
城には実際に訪れてロマンを感じたり、遺構を見たりする楽しみもありますが、地形や地勢を見ながら将棋のように戦国武将になった気分で戦略を推理する楽しみもあります。
戦国の城を知り、入門するには最適の一冊。城について調べるときには必ずそばに置いておきたいと思います。
世界的巨大城郭の魅力を一冊で!『江戸城の全貌』【荻原さちこ】