軍事的な面から見た“戦の時代”『戦国の軍隊』

書評

西股総生さん著『戦国の軍隊』を読みました。

戦国時代に関心を持つ人にとって必読の本だと思います。

戦国時代は人気だが…

日本史の中で人気があるのは、やっぱり戦国時代でしょう。

なんといっても、その人気の頂点は「信長・秀吉・家康」の三英傑です。

ただ、人気があるといっても、戦国時代の実態について、広く知られているかというと、また違ってきます。

本書は、城郭研究家の西股総生さんによる戦国時代の軍隊について、軍事的な面から考察した本です。

本書の問題意識は以下のようなものです。

戦国時代の戦国たるゆえん、つまり軍事・戦争という分野に関する研究は、意外なほどに進んでいない。

日本史というとどうしても、民衆史、権力史みたいなイメージがあり、戦国時代の研究であっても軍事的な面の言及が少なかったんですね。

先ほどの三英傑の話で言うと、信長の軍隊は兵農分離していて先進的、敗れた大名の軍隊は後進的、というイメージで語られがちです。

戦国時代は戦争の時代。では、その軍隊は?

しかし、話はそう単純でもないのです。

近年は、革新的で革命児的な信長像が研究により変わりつつあります。

本書では、著者の専門から後北条氏の史料をもとに書かれている部分が多いです。

火力の組織的運用と、個人のスタンドプレーという二つの要素は、実は戦国時代の軍事力構造を考えるうえで重要な鍵となる

軍役で動員されてきた数十人から、数百人までのある意味バラバラの集団を、どう統一される集団に編成していたのか(苦労していたのか)、は本書の読みどころのひとつですね。

軍隊を行動させる上で欠かせない“補給”

軍事行動を行う上で欠かすことができないながら、つい軽視されがちな”補給”についてもがっつり書いてあります。

たとえば、秀吉が十万人以上の兵力を動員したということは知っていても、ではどうやって補給をしたのかについて、教科書などで見たことはありませんよね。

軍事史的には、後方からの補給で全軍を支えられるようになったのは、1944年のノルマンディー上陸作戦からなのだとか。

日本人の傾向なのか、補給について語られることはそれほどありません。

でも、戦国時代という「戦争の時代」を語る上でははずすことのできない要素です。

おわりに

現代の軍事的な考えがそのまま戦国時代に当てはまるわけではもちろんありません。

でも、戦争、軍事についての研究は進歩しているし、

戦国時代に興味を持っている人にはぜひ、読んで欲しい本です。

お城の知識をアップデートしよう!『図説戦う日本の城最新講義』 | つぶログ書店

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