プロ選手にもアドバイスをするプロの野球素人、お股ニキさんの初めての本を読みました。
素人ならではの分析から現在の野球のトレンドまで、すべての野球好き必読の一冊です。
プロの素人による野球論!
MLBで開幕戦が行われ、いよいよ2019年シーズンが始まりました。
今回はダルビッシュ有投手にもアドバイスをしたことでも知られるお股ニキさん初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』を紹介します。
日本ではプロ野球の人気が高いこともあり、新しい野球のトレンドがそこまで知られていないような気がします。
スラッター、バレルゾーン、ジャイロ、ポスト分業化などこれまで知らないような言葉もたくさん出てきます。
プロ経験がない、素人だからこそ書くことのできる野球についての考え方が目白押しでとても面白い本なのです。
投手について
最近のMLBの投手のレベルの向上はすごいものがあります。
MLBのフォ ーシ ーム (ストレ ート )の平均球速はここ10年間 、毎年のように上昇しており 、 2013年には時速 93マイル (約 149.7キロ )を超えた 。恐ろしいのは 「平均で 」ほぼ 150キロというところで 、 150キロは投げて当たり前の世界になっているのだ。
日本が誇るレジェンド、イチロー選手が引退を発表したが、その外的な理由としてこの投手の球速の向上がある気がしてなりません。

現代のメジャーリーグではクレイトンカーショー、マックスシャーザー、コーリークルーバー、クリス・セールが四天王と言える。
個人的にこういう現代的投手のモデルになったのは先日野球殿堂入りを果たしたロイ・ハラデイがモデルになっているのではないかと考えています。
全力で 1 0 0マイルを投げるよりも 8割の力で 9 3 ~ 9 5マイルで安定させ 、球質やコントロ ールを追求した方が 、故障を抑えつつト ータルでの成績最大化に繋がるのはマックス・シャーザーやクレイトン ・カ ーショウ、コーリー・クル ーバーといった一流投手たちが証明している 。
2019年シーズン開幕戦、ナショナルズのマックス・シャーザーの投球を見たが、全力で投げれば100マイル近く出るはずだが、それだとコントロールがしにくいのと消耗が激しいので、95マイル前後でまとめている感じ。
MLB開幕戦、ナショナルズ、マックス・シャーザーとメッツ、ジェイコブ・デグロムの投げ合いを見返している。
サイ・ヤング賞投手同士の投げ合いで最高の試合と言える。
— つぶあん@つぶログ書店福山 (@ttsubuan) 2019年3月30日
そして、フォーシームと同じ軌道から変化させて打ち取っていく。8割くらいの力の方がコントロールしやすいのでしょうね。
150キロ後半の分かってても打てないストレートに、145キロ前後のスラッター+高速チェンジを同じ軌道から左右に散らす
ゾーン内で圧倒できる速球と、ストライクからボールに落とす変化球
一つの境地、究極だわな。 pic.twitter.com/rfoe5c9TwL— rani (@n_cing10) 2019年3月29日
打者について

ただ最近は打者もホームランや長打を打つ技術を向上させていて、本の中では「投高打高」という言葉で表現されています。
最近話題のフライボールレボリューションは昨今のメジャーリーグを席巻しましたが、最近はただフライを打てばいい、打ち上げればいいというところから一歩進み新しい打撃も模索されています。
データ的に優れている選手とはまた別に試合を決めるために積極的に打ちにいく選手も必要になってきます。
「正解のコモディティ化」という言葉が本書で書かれていますが、ある程度洗練されてくるとどうしても方法論は似てくるもの。
だからこそ、イチロー選手のメジャーデビューは衝撃的だったわけですね。
現在の「三振かホームラン」という野球を究めるところまで行ってしまうと、その枠を壊す新しい選手が出てくるのでしょう。
野球論は日本論につながる
本書を読んでみると、日本の野球というのはかなり独特だな、ということに気づきます。
正確にいうと日本の野球が、というより日本人の野球観が、という感じになりますね。
『セイバーメトリクスの落とし穴』は野球についての本で、そこがすこぶる面白いのだけれど、ある意味で“日本論”的部分もある。
あまり意識することがないけれど、日本の野球観ってかなり独特なのかも。
『セイバーメトリクスの落とし穴 (光文社新書) 』(@omatacom )https://t.co/gP7kpnvJPr
— つぶあん@つぶログ書店福山 (@ttsubuan) 2019年3月26日
セイバーメトリクスやメジャーのやり方が唯一の正解というわけではありませんが、いろいろ検討しながら取り入れてもいいはず。
本文の中でも触れられていますが、最近の日本では野球に限らず、“内向き”志向があると感じます。
日本人としてなにかを法則化して信じたいという欲求があるのではないかと。
野球は将棋や囲碁のようなボードゲームの性格もあるから、それが日本人の国民性と合っていたのかもしれませんね。
やり方というのは時代のよって、あるいは試合展開によって、選手に合わせて変えていくものであって、「2番だからつなぎ」「右打者は右打ちができないと」という決まりごとが多いとどんどん野球が窮屈になる気がしています。
この本の中で繰り返し述べられているように唯一絶対の法則はないはずです。
これから注目したい技術・投球

この本の中で書かれていて印象に残ったのは「スラッター」、「フレーミング」など日本ではそれほど知られていない技術です。
▲ちなみにスラッターはこういう変化をします。この動画を見るとフォーシームと同じ軌道できて急速に縦方向にスライドしていることがわかります。
▲キャッチャーのフレーミングというのはこういう技術です。
「フレーミング」とはその名前からイメージされる通り 、ストライクゾーンとボールゾーンの間 、ギリギリのコースに来たボールを 、ミットを動かしたり 、身体を寄せたりすることで審判からストライクのコールを引き出す技術である 。
セイバーメトリクスもそうですし、フライボールレボリューションもそうですが、これまで一流選手だけが掴むことができていた感覚がデータ技術が進化することで、ある程度“見える化”されたことにより、全体としてのレベルが底上げされた感じ。
本書でも書かれていますが、超一流というのはいい意味でマシーンのように自分のプレイの精度を高めて、しかもそれを繰り返すことができるんですよね。
データ技術が進化すると、超一流の技術が“見える化”される。
普通の選手でもそれを元に自分のデータと比較して試行錯誤することができる。
もちろん、まったく同じことができるわけではないが、何もなく手探りでやるよりは効率がいい。
最近のMLBでのレベル向上はこの辺りが関係あるかも。
— つぶあん@つぶログ書店福山 (@ttsubuan) 2019年3月30日
まとめ
プロ野球選手にもアドバイスする、プロの素人”プロウト”による野球論。
新しい野球観を知ることができるおすすめの一冊です。
野球に関してTwitterや海外のニュースや記事を追いかけていなかった人にとっては初めて知ることも多いのでは。
この本を読んで自分なりに野球について考えるのが楽しいですよ!
MLB見るならMLB.TVが便利!ということで契約してみた!