毎月連載のコラボ書評。
今回のテーマ本は朝井リョウさんの『正欲』です。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評は奥田英朗さんの『罪の轍』でした。
【コラボ書評】実際の誘拐事件を元にした犯罪小説:奥田英朗『罪の轍』 | つぶログ書店
刑事と犯人両側から見えていく真実に引き込まれる「罪の轍」奥田英朗 | 坂本、脱藩中。
コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店

今回のテーマ本は朝井リョウ著『正欲』

今回のテーマ本は朝井リョウさんの『正欲』です。
今回はさかもとさんが本を選んでくれました。
こちらが『正欲』のあらすじです。
あってはならない感情なんて、この世にない。それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ――共感を呼ぶ傑作か? 目を背けたくなる問題作か? 絶望から始まる痛快。あなたの想像力の外側を行く、作家生活10周年記念、気迫の書下ろし長篇小説。
朝井リョウ 『正欲』 | 新潮社
この本を読んで感じたこと
あってはならない感情なんて、この世にはない。
それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にはいないということだ。
この作品は朝井リョウさんの作家生活10周年を記念した作品です。
ぼくは朝井さんの作品を読むのはこれが初めてです。
読む前はあらすじから得た情報でものすごく重たい話かと思い、読むのを少し寝かせました。
でも、ふと手に取って読み始めると一気に読み終わりました。
最初は一体どういう内容なんだ、という疑問が浮かび続きが気になっていったという読みすすめていった感じです。
読み始めるのに時間がかかったのは、ぼくが古いものが好きで“今”を切り取るタイプの作品をそんなに得意としていないということがあります。
この作品がまさにそういうスタンスを持っていて朝井リョウさんの問題意識で作品を書いてあるからです。
さすがにぼくも最近は多様性に関する議論が盛んに行われ、昔は当たり前だったことも見直しが行われていることは知っています。
ぼくはそういう議論は一旦置いておいて、現代にどことなく居心地の悪さを感じているタイプの人間なので本作の展開は心にくるものがありました。
本作は性的嗜好がひとつのキーワードになっています。
この本を読んで初めて知ることもたくさんあったし、勉強にもなりました。
趣味で例えて言うとニッチであればあるほど、同じものを好きな人と出会うのが難しい。
これもそういう話。
昔だったら本作の登場人物も湧き上がってくる思いを自分の中に留めていたかもしれません。
感情もネットやスマホ、SNSの登場で”繋がる”ことが可能となった、そういうリアリティを持った作品だと思います。
本作の中でのメッセージは「誰も本当の正解はわからない」ということではないでしょうか。
マイノリティとされる人も、マジョリティ側に位置するとされている人も。
読む人ごとに感じるものが違う、そんな受け取りができる作品ではないかと思います。
まとめ
朝井リョウさんは若手の作家というイメージでしたが、もう10年もキャリアがあるんですね。
本のコピーで「読む前の自分には戻れない」というのがありましたが、たしかに自分の中に何かを残す作品ですね。
ぜひ読んでみてください。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店
さかもとさんの書評
さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。
さかもとさんの書評はこちらから。
大人同士の「理解」の振れ幅について考えさせられた「正欲」朝井リョウ | 坂本、脱藩中。