毎月連載のコラボ書評。
今回のテーマ本はノーベル賞作家カミュの『ペスト』です。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評は川上弘美さんの『某』でした。
- 【コラボ書評】文学によって生と肉体を照らし出す:坂口安吾『白痴』ほか | つぶログ書店
- 56年前の日本でも人は同じように悩み、こじらせてる「桜の森の満開の下・白痴・他十二編」坂口安吾 | 坂本、脱藩中。
コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 |

今回のコラボ本はカミュ『ペスト』

今回のテーマ本はノーベル賞作家アルベール・カミュの『ペスト』です。
今回はさかもとさんが本を選んでくれました。
『ペスト』のあらすじ
『ペスト』のあらすじはこちらです。
アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。
外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。
カミュ、宮崎嶺雄/訳 『ペスト』 | 新潮社
このあらすじを読んで、今まさに現在進行形のコロナウィルスのことを考えざるをえません。
現に、新聞など各メディアでも注目され、かなり売れていたようです。
この本を読んで感じたこと
物語の始まりはごくごく静かなものです。
パニック映画やゾンビ映画など、災禍に見舞われるようなタイプの作品は極限の状況と対比するためか、静かな始まりのものが多いですよね。
たとえば、日常に少しずつ非日常とはいえない小さな変化が出てきて、気づいたら大ごとになっているという展開です。
本作『ペスト』でも、はじめは街角でネズミが死んでいて、それが段々と増えてくる。
処理数が増えていき、「これはヤバいんじゃないか?」という感じが上がっていき、人にも病気で倒れる人が出てくる。
天災というものは、事実ざらにあることであるが、しかし、それがこっちの頭上に降りかかってきたときには、容易には天災とは信じられない。
実際読んでみて、今の日本、そして世界が直面している状況を予言したかのような物語が展開されます。
日本では緊急事態宣言は解除されましたが、この本にはロックダウンや外出の制限、店の営業停止、など現代でも行われている対策・状況が描かれています。
感染症に対する対策としては一般的だということかもしれません。
ただ、対策だけではなく人々の動揺だったり、極限の状況での内面・葛藤が描かれています。
なんとか市外へ脱出しようとする人がいたり、ホテルの経営者で最初は満室だったけど、外部から客が来なくなり困惑している人が出てきたり。
コロナ禍を生きる今だからこそ

人類が感染症に対峙するのは歴史上初めてではないけれど、新型コロナウィルスに対するのは初です。
科学的な対処というものはありつつ、何が正解なのかわからないというのはかなりストレスが溜まりますよね。
そう、それはまさに今コロナ禍に直面している私たちが体験していることでもあります。
どれだけ科学が進歩しても、未知の病気・感染症に対して、人間が打つことができる手というのはものすごく限られているのではないかとこの本を読みながら考えさせられました。
そして、それはまさにコロナ禍を生きる私たちが感じていた不安の、理由の一つではないでしょうか。
デマに対する影響が描かれてるのも、驚きました。
コロナでは、テレビなどのマスコミSNSも含めてコロナではさまざまな反応がありましたよね。
こうした小説を読むと人間の根本の部分は作品の書かれた何十年も前から変わっていないのだろう。
そして、たぶん今後何百年も変わらないのだろうとも。
余談ですが、翻訳が前のものなのか端役の人物の口調が昔読んでいた世界文学の世界だ!と思ったりもしました。
まとめ
本作は淡々とした文体で書かれており、それがまたコロナウィルスによる状況下を経験した身にはリアルに感じられました。
コロナウィルスによる影響は今でも続いています。
ぜひ、今だからこそ読んでみてください!
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店さかもとさんの書評
さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。