図書館は本と出会う大切な場所です。最近出版社のひとが文庫本の貸出をやめるよう求めるという気になるニュースがあったので記事を書きました。
文庫本の貸出をやめる?
昨日気になるニュースが流れて来ました。
文藝春秋社の社長が図書館の大会でパネリストとして登壇し、その席で図書館に対し、文庫の貸出をやめるよう求めるというのです。
「文庫の貸し出しやめて」=文春社長が図書館大会で要請へ:時事ドットコム
これを聞いた時頭にいくつか「?」が浮かびました。
昨今小説家の方が図書館に自著の貸出猶予を求めたりする流れを知っていたからです。
文藝春秋社の売り上げの3割は文庫によるものだそうで、なるほどそれなら文庫のことに対して神経質になるのも理解できます。
しかし、図書館に対して貸出ないように求めるのは何か違うような気がするのです。
なにしろ図書館も文庫本を購入しているのです。
貸出をするので一般のかたとは違いますが、言ってみれば購入者に対してそういう言い方をするかなと思ったのです。
私自身のことを考えても中学生や高校生のとき図書館でよく文庫本を借りていたことをよく覚えています。
当時はお金もないし本はたまに買うだけでした。
私は図書館のおかげでたくさんの本を読むことができて読書好きになりました。
いまでは欲しい本はすべて、とまではいわなくてもある程度は帰るようになったしよく読んでいる方だと思います。
図書館は本と読者をつなぐ役割を持っている
図書館は本の世界と読者をつなぐ役割を持っていると思います。
たしかに図書館が本を買うといっても貸出や館内で読む人もいるため売り上げに響いている面はないとはいえないでしょう。
しかし、サイクルが早いいまの出版界にとって図書館は読者にとって本と出会う機会を作る貴重な場だといえます。
私のように小学生、中学生、高校生のころ、本をひんぱんに買えなくても図書館によって本と出会うことができるのです。
図書館でも書店でも読書の楽しみを知ったこどもはきっと将来いい読者となって本の世界を支えてくれる存在になるはずです。
文庫を貸し出さないということはそういう場を産むチャンスを自ら刈り取ってしまうことにほかなりません。
本との出会いを大切にして
私自身経験がありますが、読書経験が少ないころはなにを読んだらいいかわからないもの。
そこで友達や先生、親しい人に聞くわけですが、当然すべての本を買うことはできません。
なにより、少ないおこずかいで本を買うのに面白いか面白くないかわからない本を買うわけにもいきません!
でもそんなときも学校の図書室、図書館にいけば探している本が見つかるのです。
文庫を貸し出さないことによって一時的には収益は上向くかもしれません。
でも、それは一時的なものです。
幼い頃に本を読む楽しさを知らなかった子どもが大人になってどんどん本を買う本好きになるでしょうか。
もちろん、私も大人になってから読書に目覚めた人を何人も知っています。
しかし、確実に裾野はせまくなる。
ライバルは図書館ではなくスマホでは?
そもそも、最近文庫が売れなくなったのはスマホなどの普及が原因ではないでしょうか。
通勤電車の中を見渡してみても学生は、友だちと話しているか、勉強をしているか、スマホでゲームをしているかです。
本を読んでいるのは少数派です。
これは大人も同じです。
スマホが一台あればニュースも見れるし、LINEやTwitterなどSNSもできるし、もちろんゲームもできます。
読書は面白いし、役に立つけど即効性がある行いではありません。
短い時間を過ごすのにスマホをさわるのも無理はないわけです。
出版社の人がアプローチするべきなのは本来このスマホ習慣の部分であって、図書館ではないはずです。
図書館が文庫の貸し出しをやめたとして、そのわずかな売り上げはあっという間にスマホに奪われてしまうでしょう。
私は図書館がすきで休日によくいきますが、そこには赤ちゃんからお年寄りまでたくさんの人がいます。
図書館が読み聞かせなどをしているおかげでどれだけ多くの子どもが本を読む楽しさを知ったのでしょうか。
図書館と出版社はこの出版不況のなか協力しなければいけないパートナーのはずです。
人は出会う機会のないものを好きにはなりません。
ベストセラーばっかり貸出をして、と言われることもありますが、図書館は日本の出版界を支える大切な存在のはずです。
どうしてここまで認識のずれが生じたのでしょうか。
文庫の貸出をやめることは簡単です。
しかし、それによってどれだけ多くの日本人が読書の機会を失うでしょう。
出版社の経営が苦しいのは素人でもわかります。
最近も月に一冊も本を読まない人が全体の半分近くもいるというニュースを見ました。
月に一冊も本を読まない人は47.5% 文化庁調査 : J-CASTニュース
その状況下で貸し出し制限を求めることは自らの首を締めることにはならないでしょうか。
まずは積極的に本にふれる機会を増やすことが必要だと思います。
まとめ
読書はとても楽しい営みです。これを経験しないのはほんとうにもったいない。
その楽しさを広め、図書館も出版社も共存していくのには「制限」では施作として間違っているのではないかと思います。
まずは本の楽しさを知る機会を増やすこと。
これに尽きると思います。
その上で共存の策を出版社と図書館で練っていくのがいいと思います。
タッグを組むべきパートナーがいがみあっているのはあまりにも悲しい。
一部のかたの意見だとは信じたいですが、大手出版社のトップがこういう意見を持っていることは事実です。
我々読者にとっても本当の付き合いを見直す局面に差し掛かっているのかもしれません。