毎月連載のコラボ書評。
今回のテーマ本は奥田英朗さんの『罪の轍』です。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評は國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』でした。
【コラボ書評】人はなぜ退屈するのか:國分功一郎『暇と退屈の倫理学』【哲学】 | つぶログ書店
オフの楽しいは踊らされてるだけ?「暇と退屈の倫理学」國分功一郎 | 坂本、脱藩中。
コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店

今回のテーマ本は奥田英朗著『罪の轍』

今回のテーマ本は奥田英朗さんの『罪の轍』です。
今回は私つぶあんが本を選びました。
こちらが『罪の轍』のあらすじです。
東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。浅草で男児誘拐事件が発生し、日本中を恐怖と怒りの渦に叩き込んだ。事件を担当する捜査一課の落合昌夫は、子供達から「莫迦」と呼ばれる北国訛りの男の噂を聞く――。
世間から置き去りにされた人間の孤独を、緊迫感あふれる描写と圧倒的リアリティで描く社会派ミステリの真髄。
暇と退屈の倫理学 増補新版 – 太田出版
実際にあった誘拐事件をもとにしたストーリー
この小説は最初の東京オリンピック(1964年)の前年を舞台にした犯罪小説です。
「莫迦」と呼ばれた宇野寛治、事件を捜査する刑事たち、その周囲の人々などを取り上げた群像劇となっています。
物語の最大のポイントになっているのが東京で起きた男児誘拐事件。
この事件は実際にあった事件で最初に報道協定が結ばれた事件としても有名な「吉展ちゃん誘拐事件」をモデルにしています。
「戦後最大の誘拐事件」と言われた「吉展ちゃん事件」をモデルに、事件の全貌を緻密な心理描写と圧倒的リアリティーで描く傑作犯罪小説です。
奥田英朗 『罪の轍』 | 新潮社
▲出版社の公式サイトで担当編集者のかたも「吉展ちゃん事件」がモデルだと言及しています。
この本を読んで感じたこと
高度経済成長にわく東京で起きた事件。
1964年の東京オリンピックを間近に控えた日本は、同じくオリンピックを間近に控えた2021年の東京とは違う光景が描かれているように感じます。
当時は高度成長期で日本全体がどんどん成長している時期です。
作中で電話がまだ一般家庭に普及していないことが描かれたり、テレビで誘拐事件を報道したことにより国民的な関心事になったりという場面があります。
この部分を読んで、当時は電話もテレビも新しいものだったんだ!という当たり前の事実に気づきました。
奥田英朗といえば犯罪小説というイメージだったがそれに違わぬ作品。
ミステリというよりはサスペンス的な要素の方が強いのではと感じたり。
「謎解き」という意味ではなく、一番広い意味での「ミステリ」ではたしかにそうかもしれません。
群像劇なので、それぞれのパートの人間模様、事件を追いかけているうちにあっという間に読み終わってしまいました。
おわりに
ミステリなのでネタバレには触れられませんが、読んで後悔しないことは約束できる小説です。
それくらい面白かった。
ぜひ読んでみてください。
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さかもとさんの書評
さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。
さかもとさんの書評はこちらから。