【コラボ書評】「暗さ」を描くことで光が見える: 沼田真佑『影裏』

書評

毎月連載のコラボ書評。

今回のテーマ本は沼田真佑さんの芥川賞受賞作『影裏』です。

毎月連載のコラボ書評

このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。

前回のコラボ書評は早瀬耕の『グレート・ギャツビーを追え!』でした。

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コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。

ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。

面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。

特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。

  • 過去のコラボ書評はこちらから。

毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 |

コラボ書評
毎月連載さかもとみきさんとのコラボ書評!

今回のテーマ本は沼田真佑著『影裏』

今回のテーマ本は沼田真佑さんの『影裏』です。

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今回はさかもとさんが本を選びました。

こちらが『影裏』のあらすじ。

第157回芥川賞受賞作。大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。

北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、
ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。
ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。
いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、
「あの日」以後、触れることになるのだが……。

樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出す。

芥川賞受賞作に、単行本未収録の「廃屋の眺め」(「文學界」2017年9月号・受賞後第一作)、「陶片」(「文學界」2019年1月号)を併録。

綾野剛・松田龍平主演で映画化(大友啓史監督)、2020年初頭に公開予定。

文春文庫『影裏』沼田真佑 | 文庫 – 文藝春秋BOOKS

本作で沼田真佑さんは芥川賞を受賞しています。

昨年(2020年)に綾野剛、松田龍平主演で映画化もされています。

映画『影裏』オフィシャルサイト

この本を読んで感じたこと

先ほども書いたように著者の沼田真佑さんは「影裏」で第157回芥川賞(2017年上半期)を受賞しました。

本書には3作の短編が収録されているうち、芥川賞受賞作「影裏」、「陶片」「廃屋の眺め」の2編が書き下ろしです。

まず「影裏」について。

裏表紙にあらすじが書いてあるが、そこに「暗い」というキーワードがあります。

誰もが持っている暗い感情という感じではなく、もっと全体的に感じているような読後感です。

『影裏』は綾野剛主演で映画になっているが、公式サイトを見ると説明としてヒューマンサスペンスと書かれています。

しかし、小説では主人公の友人、日浅にまつわる「謎」が鍵となっているもののそこが一番の見せ場ではありません。

純文学なのでエンタメやミステリーのように事件が解決して終わり、という類の作品ではありません。

登場人物の人生のうち、この小説の場面、年月だけを切り取ったような描写になっているのが印象的。

読んでいるときのスピード感が変わらず、淡々と書かれています。

ほかには印象に残ったのは「廃屋の眺め」という作品。

五十棲(いそじま)という人物が出てくるが、その人が遭遇する事件の奇妙さ、ある種の滑稽さ、いたたまれなさ。

このことを知ってら一体どう表現したらいいんだろう、というとき人が感じる虚な感じが物語から受ける印象です。

文学は時代を切り取る鏡だといいます。では、今はどんな時代だろう?とこの本を読みながら考えました。

昔は純文学をたまに読んでいたんですが、最近はめっきり読まなくなっていました。

今の文学はこういう感じなのか、というのが一つの気づきかもしれません。

(もちろん、それだけでは言い切れない面もあります)

読み終わったあとに気づいたのですが、表紙も『影裏』の文字が影で薄くなるようなデザインになっていますね。

まとめ

この本を読み終わって、あらすじにもあるような「暗さ」を感じました。

影を描くことによって作品の中には描写されていない「光」も見えてくるのかもしれない。

そんなことを考えましたね。

今回コラボ書評で取り上げたことをきっかけに映画を見てみるのもいいかもしれないと感じました。

さかもとさんの書評

さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。

さかもとさんの書評はこちらから。

人を裏切り生き続ける人はどこに行くのか。第122回芥川賞受賞作「影裏」沼田真佑 | 坂本、脱藩中。

今回取り上げた沼田真佑著『影裏』

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