マディー・ウォーターズが農園で働いていたころにレコーディングした貴重な記録を入手しました。
マディー・ウォーターズが“マディー・ウォーターズ”になる前の時代
マディー・ウォーターズといえばブルースを聴く上で絶対外せない正真正銘のレジェンド。
ロックファンにもたくさんのカバーやストーンズとの競演で知られています。
多くのスターに「ビフォー・アフター」があるようにブルース界のスターとしてヒット曲を連発するマディー・ウォーターズにも「ビフォー」があったわけです。
それが今回紹介するアルバム、「The Complete Plantation Recordings」です。
これはマディー・ウォーターズがまだ農園で働く農夫で、アマチュアミュージシャンだったときにアメリカ議会図書館のためにレコーディングした貴重な記録です。
なぜ、当時はまだ無名だったマディが議会図書館のためにレコーディングしたのか。
それは当時アメリカ議会図書館はアメリカ各地の民族音楽を記録するために各地でレコーディングを行っていたからです。
その一環で「南部で黒人音楽を記録する」という目的からレコーディングが行われました。
このレコーディングを行った民俗学者アラン・ロマックの目的はあの“ロバート・ジョンソン”のレコーディングをすること。
しかし、当時すでに亡くなっていたロバート・ジョンソンのレコーディングは叶わず、巡り巡って白羽の矢が立ったのがのちのマディー・ウォーターズ、当時はマッキンリー・モーガンフィールドでした。
1941年のことでした。
The Complete Plantation Recordings – Wikipedia
マディー・ウォーターズ登場!

ここでのマディー・ウォーターズの自己紹介がまたイカしています。
「俺の名前はマッキンリー・モーガンフィールド。ニックネームは“マディー・ウォーター”
。ここら辺じゃ、ちょっとしたギター弾きさ。」
のちのマディー・ウォーターズのスタイルと言えば、エレキギターとバンドスタイルが有名ですが、ここではほぼギター一本、ハープで歌っています。(マディ以外の参加もあり)
「l Can’t Be Satisfied」の元になるような曲も収録されています。
一緒に収録されているインタビューでサン・ハウスを聴いていたという言葉もあるようにここでのマディーは伝統的なデルタブルーススタイルで歌っています。
ごくごくシンプルな演奏なのにのちのマディが垣間見えるところがすごく面白いですね。
そして当時のリアルな黒人たちの暮らしぶり、ブルースを感じることができます。
ライナーによるとマディ自身レコーディングされた自分の声を聴くのは初めてだったとか。
このレコーディングで自信をつけたのか、マディーは28歳でシカゴへと旅立つことになります。

▲マディのキャビンから農園を見た写真。貴重です!
ディスクユニオンで買ったマディ・ウォーターズの初レコーディング集。
— つぶあん@つぶログ書店福山 (@ttsubuan) November 20, 2019
あのロバート・ジョンソンの代わりにデビュー前にアメリカ議会図書館用にレコーディングしたもの。
マディはこの後シカゴに旅立つことになる。
ブルースの巨人が誕生した瞬間だ。 pic.twitter.com/3UBka07GlJ
マディ・ウォーターズ The Complete Plantation Recordings – 奄美のCD屋サウンズパル
まとめ
このアルバムは記録的要素が強く、まだ「あの」マディー・ウォーターズにはなっていない時代の音源です。
しかし、それでいてマディはすでに“マディー・ウォーターズ”だったんだということに気付かされます。
マディー・ウォーターズを聴くときに最初に聴くアルバムではないかもしれませんが、ハマったらいつか聴きたい、そんなアルバムですね。
これぞ,マディ・ウォーターズの真髄!「リアル・フォーク・ブルース」 | つぶログ書店
今回紹介したアルバム
The Complete Plantation Recordings