毎月連載のコラボ書評。
今回のテーマ本は辻村深月さんの『琥珀の夏』です。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評は朝井リョウさんの『正欲』でした。
【コラボ書評】誰も本当の正解はわからない:朝井リョウ『正欲』 | つぶログ書店
大人同士の「理解」の振れ幅について考えさせられた「正欲」朝井リョウ | 坂本、脱藩中。
コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店

今回のテーマ本は辻村深月著『琥珀の月』
今回のテーマ本は辻村深月さんの『琥珀の夏』です。
今回は私、つぶあんが本を選びました。
こちらが『琥珀の夏』のあらすじです。
大人になる途中で、私たちが取りこぼし、忘れてしまったものは、どうなるんだろう――。封じられた時間のなかに取り残されたあの子は、どこへ行ってしまったんだろう。
かつてカルトと批判された〈ミライの学校〉の敷地から発見された子どもの白骨死体。弁護士の法子は、遺体が自分の知る少女のものではないかと胸騒ぎをおぼえる。小学生の頃に参加した〈ミライの学校〉の夏合宿。そこには自主性を育てるために親と離れて共同生活を送る子どもたちがいて、学校ではうまくやれない法子も、合宿では「ずっと友達」と言ってくれる少女に出会えたのだった。もし、あの子が死んでいたのだとしたら……。
30年前の記憶の扉が開き、幼い日の友情と罪があふれだす。
圧巻の最終章に涙が込み上げる、辻村深月の新たなる代表作。
『琥珀の夏』辻村深月 | 単行本
この本を読んで感じたこと
辻村深月さんの作品を読むのは久しぶりです。
直木賞受賞作「鍵のない夢を見る」を読んで以来。
辻村さんはデビューしたばかりの頃はミステリー作家という印象でした。
最近はより“人間”、“ドラマ”の部分にフォーカスした作家になっているという印象を持っていました。
ただ、本作でもミステリ的な要素、どちらかというとサスペンス的な部分は物語の鍵として残っています。
それがこの物語の謎になっていて、それを元に30年前のこと、現代の事件が繋がっていきます。
実は自分で選んでおきながら読む前は「ちょっと重たいテーマかも?」と思い、いつもより読み始めるのが遅くなりました。
でも、物語が動き出すと俄然面白くなり、読むのが止まらなくなりました。
ミライの学校という舞台
この作品は“ミライの学校”と呼ばれる団体を舞台にした作品です。
“学校”と言っても、いわゆる私立の学校ではなく独自のルールで運営されています。
その特徴ら子どもたちが共同生活を送りながら、先生が“問答”という問いかけを生徒にし、自分の頭で考えるとされています。
法子は同級生に誘われてミライの学校が開催する夏合宿に参加することになります。
ミライの学校の子どもたちは麓の学校、いわゆる普通の学校にも通っています。
この作品では子どもならではの純粋さ、反対にその残酷さも描かれます。
それが“ミライの学校”という舞台で展開されることによってより際立つような印象です。
イジメだったり、クラスから仲間外れになり、浮いてしまったり。
大人と同じように本音と建前があったり。
そして主人公の法子(とその家族は)はミライの学校の一員ではなく、友達に誘われて夏合宿に参加しただけです。
それが”ミライの学校”、“麓”という比較を読みながらすることにもなります。
物語の仕掛けが何重にも張り巡らされている感じです。
まとめ
先ほども書いたように辻村さんの作品は最近読んでいませんでした。
あらすじにもあるように本作は“カルト”と称されるような場所を舞台にしています。
でも、実は結構普遍的な人間のこと、分断や調和のようなことをテーマにしているのかも?とちょっと考えたりしました。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店
さかもとさんの書評
さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。
さかもとさんの書評はこちらから。
子どもの心を思い出し親子の関わりを再考させられるミステリー「琥珀の夏」辻村深月 | 坂本、脱藩中。