毎月連載のコラボ書評。
今回のテーマ本は早瀬耕さんの『未必のマクベス』です。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評はチャールズ・ブコウスキーの『勝手に生きろ!』でした。
コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 |

今回のテーマ本は『未必のマクベス』
今回のテーマ本は早瀬耕さんの『未必のマクベス』です。
未必のマクベス | 種類,ハヤカワ文庫JA | ハヤカワ・オンライン
今回はつぶあんが本を選びました。
IT系企業Jプロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は、帰国の途上、澳門(マカオ)の娼婦から予言めいた言葉を告げられる――「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。やがて香港の子会社の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。異色の犯罪小説にして、痛切なる恋愛小説
未必のマクベス | 種類,ハヤカワ文庫JA | ハヤカワ・オンライン
こちらが『未必のマクベス』のあらすじ。
タイトルにもある通り、この小説はシェイクスピアの四代悲劇のうちの一つ、『マクベス』がキーになっています。
『マクベス』を読んでいて、流れが頭に入っているとこの本をより楽しむことができるのかもしれません。
(もちろん読んでなくても楽しめました。)
ちなみに解説の北上次郎さんもマクベスをきちんと読んだことがなかったそう。ちょっと意外。
この本を読んで感じたこと
「否応なく、王として旅を続けなくてはならない」
これは澳門(マカオ)で中井が言われた一言だけど、タイトルにある通り物語の根底に流れているのはシェークスピアの『マクベス』です。
最初はおしゃれな感じで、村上春樹的な感じもあり、「これは一体どういう話の展開になるんだろう?」と思いました。
それが本全体の4分の1を過ぎたあたりから一気に話の様相が変わってきます。
ちょうど中井と伴がJプロトコルから香港のHKプロトコルに移りから少しずつ雰囲気が違ってくるんですよね。
そして、中井が社長に就任したHKプロトコルの裏がどんどん出てきて物語が急展開します。
言ってみれば普通の人だった中井がそうではなくなっていく過程です。
中には裏の仕事を請け負うプロの仕事人も出てきますが、仕事上の落ち着きとは異なる自分の人生から一歩引いたような印象を受けます。
感情として冷静なのとはまた違う感じです。
ただ、中井をはじめ、登場人物たちにどこか冷めた雰囲気を感じ、そこがこの本の個性になっているかもしれません。
出版社によるあらすじに「異色の犯罪小説にして、痛切なる恋愛小説」とありますが、犯罪の部分はなんとなく読む前からなんとなく感じていました。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、「恋愛」というのがこの物語の中で一番重要な要素かもしれません。
全編に漂う「切ない」感じはそういうところから来ているのかも。
まとめ
文庫本でかなりの分厚さですが、読み始めると面白くて早く読み終わりました。
『マクベス』についてはあらすじくらいしか読んだことはなかったけど、今度図書館ででも借りて読んでみようかな、と思います。
ぜひ、読んでみてください。
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さかもとさんの書評
さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。
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