妻が寝ている時の夜食は魚肉ソーセージがベスト。伊坂幸太郎『AX』はライフハック小説だった!

伊坂幸太郎AX 書評

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月一で連載しているオトコとオンナで本を読み合う書評コラボです。今回の本は伊坂幸太郎さんの『AX』です。

オトコとオンナの本の読み方

今回の本を選んでくれたのはブログ坂本、脱藩中さかもとみきさんです。

毎月交互に本を選んで、書評を書き合っています。これむっちゃ楽しいです。

女性と男の読み方で違いが出てくるのも楽しいし、実際に記事を書くのもいい。

ちなみに前回の記事はこちら。

さかもとみきさん

つぶあん

というわけで今回は伊坂幸太郎さんの『AX アックス』を取り上げますよ〜。どうぞ!

伊坂幸太郎ってどんな人

で、伊坂幸太郎さんってどんな作家さんなんでしょう。

もともと私は伊坂幸太郎さんが好きでよく読んでいました。少し前だと「ゴールデンスランバー」や「重力ピエロ」「アヒルと鴨のコインロッカー」などの作品が知られていました。

初期の作品でよく言われていたのが伏線回収

作品の随所に伏線を散りばめ、最終的に見事にそれを回収していくタイプの作品を多く書いていた印象でした。

本屋大賞も受賞し、文字通り人気作家ですね。

今回取り上げた『AX アックス』は<殺し屋シリーズ>という作品群に属しています。

さまざまな殺し屋が出てくるエンターテイメント作品ですが、これまでに『グラスホッパー』と『マリアビートル』が刊行されています。

ちなみに本作を始め<殺し屋シリーズ>に槿という人物が出てきますが、これって古井由吉さんの作品の影響なんですよ。

古井さんは『聖・栖』や『槿』が好きで、読むと、やっぱりこういうものでなければ純文学ではないんだろうなと思わされます。ただ、『槿』は、最近復刊されてみんなが読めるようになったのでちょっとガッカリしてます。僕は心が狭いので、自分だけのものにしておきたかったので(笑)。今度の新刊にも“槿”という名前の人物を登場させているんですよね。

作家の読書道:第31回 伊坂 幸太郎さん

本作がシリーズで初めての連作短編の形式を取ってもいます。

殺し屋は恐妻家?

本作の主人公は“兜”。

文房具メーカーで営業として働きながら裏では殺し屋をしているという設定です。

この殺し屋の仕事の受け方が面白い。

ある病院の医師が窓口となって仕事を斡旋するのですが、ほかの人に察せられないよう隠語でやり取りをしています。作中でその道のプロを“悪性”と表現したり。

今回の標的は“悪性だ”なんてやり取りをするわけです。

主人公のこの物語のほぼ前半は兜を中心に展開していきます。この作品のポイントが主人公の兜が恐妻家であるということ。

それがどのくらいかというと夜中に帰宅した時に妻を起こさないように静かに行動するのはもちろん、夜食で起こす可能性を極限まで減らすためある食べ物にたどり着きます。

それは魚肉ソーセージ。それを、もそもそと音を立てないように食べるわけですね。お腹にもたまるというわけです。

一事が万事この調子で、妻の機嫌を損ねないように全神経を集中させているわけです。

何が食べたいって聞かれたら「なんでもいい」なんていうはずがありません。

足りないものがあったら買いに行く。家では妻の裏メッセージを読み取り、機嫌を損ねないように努める。

もしかしたら世の中にこういうお父さんは多いのかも。

こういう対比が物語の独自性につながっている気がします。ホームコメディーともいえる日常パートと、殺し屋パートの対比が面白いところですね。

印象に残ったのは

伊坂幸太郎さんの書く人物は一見普通に見えるような人が多いです。伊坂さんご本人もこういう風に言われていますね。

僕の小説の主人公はだいたい普通の人で、よく「透明な存在感」とか言われますけど、ようするに、僕なんです(笑)。ごく普通の日常を送っている僕が、非日常の冒険をしたいから小説を書いてるんですね。そして僕自身がすごく心配症で断言とかできないタイプの人間だから、人生の道標となるような、判断力のあるクールな人に憧れがある。だから「こっちに進め!」って断言してくれるような人を、小説の中に出したくなるんです。
伊坂幸太郎「僕は島田荘司信者」 | ダ・ヴィンチニュース

あと個人的に好きなのは会話の面白さ。

私は伊坂幸太郎さんのファンを自認していましたが、ここ最近は新刊を熱心に追いかけることは少なくなっていました。

それは伊坂さん自身の作風の変化もあるし、あまり小説を読まなくなったという私の変化もあります。

でも久しぶりに伊坂作品を読んでみて、最初から伊坂さんらしいセリフ回しが出てきて、これ!これ!と嬉しくなってしまいました。

どこか人を食ったような、というとニュアンスが違うんだけど。やっぱり面白い小説は会話がいいですよ。

殺し屋仲間(?)と話している時と家族で話している時、そういうどこかズレたような“軽み”のある会話を楽しんでほしいですね。

連作短編ということはそれぞれのお話がリンクしています。

一話一話で楽しめるように配慮されていながら、最終的にはしっかり落とす。

そういうテクニックの冴えも楽しめる一冊ではないでしょうか。

細かいことはあまり書かないようにしているんですが、むっちゃいいたい笑と思います。

ぜひ、本を手に取り確かめてみてください。

どんな人におすすめか

まず、伊坂幸太郎ファンは読んでください。殺し屋シリーズが好きならなおさらです。

ファンなら読みながらニヤニヤ出来る仕掛けもあるし、やっぱり圧倒的に読ませてくれます。リーダびりティーがすごいというのか。

シリーズというか『グラスホッパー』から読まないといけないと思ってしまうかもしれませんが、この本は大丈夫です。

シリーズ未経験の人にも楽しめる一級のエンタメ小説になっています。

この本をきっかけに伊坂幸太郎の世界に入るのっていいんじゃないですかね。最初に書いたように初期は本作以上に伏線回収っていう要素が強いのでどんな人にも楽しめるはずです。

いや、伏線があって回収するタイプの作品だとわかっていながら面白いので安心してください。

個人的に好きなのは、

このあたりでしょうか。正直どれを読んでも面白いので気になったものから手にとってみてください。

あとがき

今回さかもとさんに選んでもらったおかげで久しぶりに伊坂作品を読むことができました。

ずっと変わらなかったものと、変わっているもの。

でも最終的には読者を面白がらせようという伊坂さんの心意気が感じられました。

ミステリーなのでネタバレなしでお送りしてきたので、結末はご自身で確かめてみてください。

伊坂さんって結構家族小説を好んで書いていたような印象を持っていたのですが、今回の作品もまさにそうですね。

各レビューでも好評なようなの年末年始の読書にどうぞ。

きっと最高の読書体験が約束されているはずです。

来月(2018年1月)の選書は私、つぶあんが担当です。実はこの過程ってすんごく楽しいんですよね。

ぜひぜひお楽しみに!

では、現場からは以上です!!

さかもとさんの書評

さかもとみきさんの書評はこちら。いや〜毎度ながら着眼点が違って面白い。

今回紹介した本

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