毎月連載のコラボ書評。
今回のテーマ本は桐野夏生さんの『インドラネット』です。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評は阿部和重さんの『ブラック・チェンバー・ミュージック』でした。
【コラボ書評】一編の評論から始まる物語:阿部和重『ブラック・チェンバー・ミュージック』 | つぶログ書店
まさか新潟が出てくるなんて!「ブラック・チェンバー・ミュージック」阿部和重 | 坂本、脱藩中。
コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店

今回のテーマ本は桐野夏生著『インドラネット』

今回のテーマ本は桐野夏生さんの『インドラネット』です。
今回は私、つぶあんが本を選びました。
こちらが『インドラネット』のあらすじです。
平凡な顔、運動神経は鈍く、勉強も得意ではない――何の取り柄もないことに強いコンプレックスを抱いて生きてきた八目晃は、非正規雇用で給与も安く、ゲームしか夢中になれない無為な生活を送っていた。唯一の誇りは、高校の同級生で、カリスマ性を持つ野々宮空知と、美貌の姉妹と親しく付き合ったこと。だがその空知が、カンボジアで消息を絶ったという。空知の行方を追い、東南アジアの混沌の中に飛び込んだ晃。そこで待っていたのは、美貌の三きょうだいの凄絶な過去だった……。
『バラカ』『日没』で文学の可能性を広げた著者が到達した、「現代の黙示録」!!
この旅で、おまえのために死んでもいいーー作家・桐野夏生が到達した“現代の黙示録”『インドラネット』発売記念企画をカドブンにて続々公開! | KADOKAWA
できあがったのは「究極の愛」の物語でした――『インドラネット』刊行記念 桐野夏生インタビュー | カドブン
この本を読んで感じたこと
今回のコラボ書評の本を選んだのはぼくですが、読むにあたって事前に情報を一切入れずに読み始めました。
主人公の八目晃(やつめ・あきら)はダメダメな人間で、まずそこが共感できました。
なにしろ友達を探しにカンボジアに行くことを決め、旅費をもらっているにもかかわらず2週間以上出発しないのです。
晃の友人である空知はある意味完璧な人間なので、そのこととの対比でこういう風に描かれたのかもしれません。
ぼく自身もグズグズと物事に取り掛かるのが遅かったりするので、こういう“普通”の人間が主人公であることでこの物語がより際立った印象を受けました。
物語のメインの舞台になるのは、空知が消えたとされるカンボジアです。
カンボジア内戦やアンコールワットの存在はもちろん知っていましたが、日本と同じアジアながら小説などの舞台になることが少なくすぐにはイメージが浮かんできませんでした。
でも、どことなく昔読んだ『深夜特急』のような雰囲気を思い出し、頭にイメージしながら読み進めました。
晃が最初に滞在し、働くことになるのもドミトリーですし。
晃は初めての海外で四苦八苦し、騙されたり丸め込まれたりしながらだんだんとカンボジアに適応していきます。
最後にはある意味、たのもしさすら感じるほど。
空知探しであちこちを探し回りますが、このパートは続きが気になりどんどん読み進めていきました。
ストーリーの最初からどことなくあやしい雰囲気がただよっており、なんとなくただの人探しではないということが感じられます。
晃に関わる人物たちもクセのある人達ばかり。
そして、ラストになると一気に物語の雰囲気が変わります。
ラストついては、この本を紹介したページに
ラスト14ページ、未曽有の衝撃があなたを待つ。桐野夏生最新長編『インドラネット』
と書いてあるほど。
一体何が起きるのか。
ネタバレには触れられないので、それは読んで確かめてください。
まとめ
今回のコラボ書評も前回に引き続いての大作。
読み終わってからしばらく物語の真相とラストシーンの余韻が残り、時々頭の中にこの本のことが浮かんできましたね。
ちょっとヘビーなところもあるけど、すごく面白いしぜひ読んでもらいたい1冊です。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店
さかもとさんの書評
さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。
さかもとさんの書評はこちらから。
カンボジアに行った気になって読めた「インドラネット」桐野夏生 | 坂本、脱藩中。