【コラボ書評】”誰でもない者”たちの物語:川上弘美『某』

書評

毎月連載のコラボ書評。

今回のテーマ本は川上弘美さんの『某』です。

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このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。

前回のコラボ書評は川上未映子さんの『夏物語』でした。

コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。

ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。

面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。

特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。

  • 過去のコラボ書評はこちらから。

毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 |

コラボ書評
毎月連載さかもとみきさんとのコラボ書評!

今回のコラボ本は川上弘美『某』

今回のテーマ本は川上弘美さんの『某』です。

今回はぼくが本を選びました。

『某』のあらすじ

川上弘美さんを読むのは、実はすごく久しぶりです。

かなり昔には『センセイの鞄』を読んだことがあります。

今回コラボ書評のテーマになった『某』のあらすじはこちらです。

ある日突然この世に現れた某(ぼう)。

人間そっくりの形をしており、男女どちらにでも擬態できる。

お金もなく身分証明もないため、生きていくすべがなく途方にくれるが、病院に入院し治療の一環として人間になりすまし生活することを決める。

絵を描くのが好きな高校一年生の女の子、性欲旺盛な男子高校生、生真面目な教職員と次々と姿を変えていき、「人間」として生きることに少し自信がついた某は、病院を脱走、自立して生きることにする。

大切な人を喪い、愛を知り、そして出会った仲間たち――。

ヘンテコな生き物「某」を通して見えてくるのは、滑稽な人間たちの哀しみと愛おしさ。

人生に幸せを運ぶ破格の長編小説。

某 | 株式会社 幻冬舎

この本を読んで感じたこと

この本を読む前に、ネットなどで見ていた短いあらすじから勝手にサスペンス系のストーリーかと誤解していたので、読み始めて驚きました。

読む前は“擬態”というキーワードがあったので、宮部みゆきさんの『火車』のような話かと思ったら、“擬態”が言葉そのままの意味だとは!

とはいえ、面白くなかったかといえば、そんなことはなく、久しぶりの川上弘美さんの作品を楽しみました。

この話の中で、変化し続けていく存在は“誰でもない者”と表現されています。

変わり続ける存在を描くことによって、生涯変わらない“人間”を描く、ということがテーマになっているのではないかと感じました。

手塚治虫『火の鳥』で、永遠の命を得た苦しみが描かれていました。

こちらは“変われない”苦しみで、本作『某』の方は“変わり続けてしまう”苦しみです。

ただ、“誰でもない者”が変わるペースは数日から数年以上とバラバラ、そして年齢、性別も選んで変わっているわけではありません。

“なぜ変わるのか”という部分は、後半の物語の展開に大きく関わってきます。

SF的設定をとことん突き詰めて現実世界に落とし込んでいくというような作品ではなく、ある意味“物語”的な感じ、寓話っぽい雰囲気を残したままというイメージですね。

まとめ

川上弘美さんの作品を読むのは久しぶりだったので、こんな作品も書くんだ!という発見がありました。

物語の展開に身を任せるように読むと、サクサクと読めて楽しめるのではないかと思います。

そして、読んでいるうちに後半の主題的な部分に差し掛かり、読んだあとに何か残るような感じです。

ぜひ、読んでみてください!

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さかもとさんの書評

さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。

今回紹介した川上弘美『某』

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