【コラボ書評】人はなぜ退屈するのか:國分功一郎『暇と退屈の倫理学』【哲学】

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書評

毎月連載のコラボ書評。

今回のテーマ本は國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』です。

毎月連載のコラボ書評

このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。

前回のコラボ書評はディーリア・オーエンズさんの『ザリガニの鳴くところ』でした。

【コラボ】ローカルなアメリカと少女の成長の物語ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』 | つぶログ書店

ミステリだけど子どもの頃の視点を取り戻せる良作「ザリガニの鳴くところ」ディーリア・オーエンズ 訳:友廣純 | 坂本、脱藩中。

コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。

ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。

面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。

特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。

  • 過去のコラボ書評はこちらから。

毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店

コラボ書評
毎月連載さかもとみきさんとのコラボ書評!

今回のテーマ本は國分功一郎著『暇と退屈の倫理学』

今回のテーマ本は國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』です。

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今回はさかもとさんが本を選びました。

こちらが『暇と退屈の倫理学』の内容です。

パスカルの有名な断章「部屋にじっとしていられないから、人間は不幸を招く」を皮切りに、文化人類学、考古学、経済学、消費社会論、動物行動学、そして「退屈論の最高峰」と著者が考えるハイデッガーの『形而上学の根本諸概念』を渉猟し、答えに接近します。

平易な文体、熱く勢いある思考が、ポジティブで自由な生の可能性を拓きます。

「私たちはパンだけでなく、バラも求めよう。
 生きることはバラで飾られねばならない」

──このウィリアム・モリスの宣言を真正面から受けとめ、現在と未来に生かそうというのです。潑剌と、明るく、しかも、哲学的な根拠をもって、「私はこう考えた。みなさんはどう思いますか?」と問いかけます。

暇と退屈の倫理学 増補新版 – 太田出版

退屈とはなんなのか

この本は冒頭で書いてあるように、最初から最後まで“通読”することを念頭に書かれています。

それは暇と退屈という問題について、著者の思考の流れと同じように読み進めて、結論に至るように構成されているからです。

この問題については自分なりの受け止め方を見出してほしいとのこと。

暇の中でいかに生きるべきか、退屈とどう向き合うべきか

これが本書の問いです。

では、退屈とはなんなのか。

途中、退屈の発生根拠についての考察があります。

ここまで“退屈”というものについて深く考えている文章を読んだことがなかったのでとても興味深かったです。

(注は読まなくてもいいとありますが)

分厚い本ですが、サクサクと読むことができ折に触れて読み返しても気づくことがあるような本だと思います。

退屈“は人類の歴史の中で比較的新しく登場してきた概念であるとのこと。

それは考えてみるとたしかにそうで、一部の特権階級以外は毎日生きるのに精一杯で必要な食べ物を得るのに一日中働かなければいけない時代も長かったです。

それが技術の進歩により、一般的な層まで”退屈“に対処しなければいけなくなりました。

余裕ができたことにより、退屈という概念が発生したという部分はうなずけるところが多いです。

ぼくも電車を待つ時間など時間はあるけど、それほどすることもないという状況になることがあります。

退屈の反対は面白さではなく、興奮であるという部分もあり、自分の中で感じていたけど言語化できていなかったことが書かれていてちょっとドキッとしましたね。

コロナ禍のなかで生まれた“退屈”

この本を読んで感じたのが、新型コロナによる「ステイホーム」との関係です。

普段通りの生活ができないことで多くの人に

リモートで仕事という場面は別として、外出できない分自宅でどう過ごすかが一つのテーマになったのではないかと思います。

その中にはきっと“退屈”という問題もあったはず。

状況は厳しいし、やることもたくさんあるけど今まで外出していた時間がぽっかり空いたため「その時間をどう過ごすか」というのは多くの人の問題になったはずです。

Nintendo Switchが売れたり、Netflixなどを視聴する人が増えるなど外出できない中で「なにをやるか」というのが問題になりました。

人はなにもしないことに耐えられない、という文が本書にもありましたが、これまで当たり前にあったものがエアポケットのようになくなってしまったので世界中の人がそれと向き合うことになりました。

おわりに

普段あまり読まないジャンルだけに難しいと感じる面もありましたが、知的興奮を味わうことができるのがこの本の面白いところかもしれません。

本の冒頭にあるように著者の國分さんの考えをたどるように書かれているので、哲学者というのはこういう風に思考するんだ、ということを知ることができたのもよかったです。

ぜひ、読んでみてください。

毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店

さかもとさんの書評

さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。

さかもとさんの書評はこちらから。

オフの楽しいは踊らされてるだけ?「暇と退屈の倫理学」國分功一郎 | 坂本、脱藩中。

今回取り上げた國分功一郎著『暇と退屈の倫理学』

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