高野秀行さん、清水克行さんの対談本『世界の辺境とハードボイルド室町時代』が面白くて一気読みしました。現代との違い、海外との共通点。興味は尽きません。
室町時代がカオスで面白い!
『世界の辺境とハードボイルド室町時代』という本を読みました。
この本は日本中世史の研究者の清水克行さんとノンフィクション作家の高野秀行さんとの対談本です。
ちなみにKindle本で読みました。
清水さんについては存じ上げなかったのですが、高野さんの著作では『謎の独立国家ソマリランド』を読んだことがありました。
過去に書いた「時代を生き抜くためのおすすめの本10冊」という記事でもソマリランドの本を取り上げています。
今回の対談本は買ってからすぐにKindleで購入していたんですが、ずっと積ん読になっていました。
Kindle Paperwhiteの再入手を機に読み始めてみるとすごく面白い!
日本史研究者とノンフィクション作家との対談なんですが、お互いの専門分野の話からいろいろな方面に話が飛び知的刺激を受けながら楽しみながら読み進めることができました。
この本すごく面白い。高野秀行さんの本はいい本が多いなあ。
世界の辺境とハードボイルド室町時代 https://t.co/xAdQahMzO8 #Amazon— つぶあん@福山ブロガー (@ttsubuan) 2018年1月27日
現代日本との違い
最近は呉座勇一さんの『応仁の乱(中公新書)』のヒットを受けて次々と室町時代の本が出版される状況になっています。
マイナーだと思っていた『観応の擾乱』という本も出ています。
個人的には戦国時代、安土桃山時代、江戸時代くらいについてよく本を読んでいたので中世史に関しては苦手意識を持っていました。
本書の著者のひとり清水克行さんはNHKの番組「タイムスクープハンター」の監修もつとめ、一般向けの本も出されている研究者です。
話す内容が難しくないかと思っていたのですが、そんなことはまったくなかったです。
この本の中でも繰り返し話題になるのは中世の日本人と現代の日本人との違いです。
清水さんの本、『喧嘩両成敗の誕生』にもありますが、中世の日本人はいい意味でワイルドです。
それは現代のように秩序が行き届いていなかった時代背景が要因としてあるのでしょう。
世界の辺境と中世の日本はなぜ似ているのか。どちらも現代日本に比べれば格段にタフでカオスに満ちた世界なのはなぜなのか。
中世の日本人が不真面目だったというわけではないでしょうが、現代の日本人を語るときに必ず言及される真面目、勤勉という性質は実は明治以後、もっというと戦後くらいに形作られた伝統なのかもしれません。
といっても遺跡から見つかる食器が家族分あったりとしっかりと日本人としての気質は受け継がれています。
室町時代の日本人は現代の日本人よりもアジアやアフリカに近いというのも面白い。
いくら自分の目で見ても、アジアやアフリカの人々の行動や習慣は、近代化が進んだ都市に住む外国人の私にはなかなか理解できない。だが、日本史を通して考えれば、「あ、そういうことか」と腑に落ちる瞬間がある。
高野さんといえば最近のヒット作『謎の独立国家ソマリランド』をはじめとしてノンフィクション作家として世界を巡って取材した作品が多いです。
読めば読むほど室町時代の日本人はソマリランドの人びとと近い気がしてきます。

もちろん、先ほど書いたようにもともと持っている国民性の違いみたいなものは確実にあるんですが、そこを超えて人類として普遍的に持っているカオスな時代を生き抜く術は共通しているんだなと感じて妙に面白かったです。
清水さんの話の中で面白かったのはいまは農村に調査に行っても、せいぜい戦前くらいの暮らしがうかがい知れるだけで中世の日本とはイコールにはならないという部分。
明治、そして敗戦によって基本は変わらないにしても暮らしや気質は大きく変化してしまったんだなと実感します。
そして高野さんの中古車販売の話も面白かった。
どういうことかというと日本では新車でもオーナーが何度か変わると、車としては全然おかしくなくても価値が大きく下落してしまいます。
逆に海外ではそこまで価値が下がらないので日本の中古車は質がいいのに価格が安いと重宝されているのです。
アフリカでも多くの日本の中古車が走っています。
ヨーロッパや中東のの方が近いにもかかわらずそれらの地域は中古価格がそこまで下がらないため日本から中古車を仕入れる方が儲けが大きいのだそう。
中世にもこの価値観は違った感じであって、中古ではないですが盗まれたものは元のものには帰らないという価値観があったようです。
「日本以外の国では、中古車の値段はそんなに下がらないんだ」って言うんですよ。「クルマの持ち主が代わった瞬間に、価格が六割に下落するなんていう国は日本しかない」って。
この本を読んでいると、本当に世界は面白いことに満ちているな、と気づかせてくれます。
『世界の辺境とハードボイルド室町時代(https://t.co/svqYfF0AsX)』を読んだり、高野さんの本を読んだりしていると自分がいかに狭い世界に住んでいるか実感するな。世界は日本や欧米だけではないってことが面白い!
— つぶあん@福山ブロガー (@ttsubuan) 2018年1月30日
まとめ
この本はすごく面白く積ん読にしていたのを後悔したほど。
Amazonのレビューも好評で最高の知的興奮を味わえる良書です。
最近の室町時代ブームより先がけて刊行された本書。
楽しみながら知識も身につき、さまざまなことを考えるきっかけになるのでぜひ読んでみてください!