[書評]いかに次の手を読まないかということ:羽生善治『大局観』

書評

福山で名人戦開催

5月25日、26日福山市で7年ぶりに名人戦が開催されます。

羽生善治名人に佐藤天彦八段が挑戦するという今回の名人戦。羽生名人が1勝2敗とやや苦境に立たされています。

今回の名人戦は福山城近くの福寿会館で行われます。

個人的には羽生名人のファンなので、防衛を果たして欲しいところです。しかし、新世代の台頭も期待したいし・・・。と優柔不断ぶりを発揮しています。

大局観とは何か

そんな中羽生名人のすこし前の著書を紹介します。タイトルは『大局観』。

将棋などをされない方にはなじみのない言葉かもしれません。

大局観とは・・・

ボードゲームに置いて、部分的なせめぎ合いにとらわれずに、全体の形の良し悪しを見極め、自分が今どの程度有利不利にあるのか、堅く安全策をとるか、勝負に出るかなどの判断を行う能力のこと。
大局観に優れると、駒がぶつかっていない場所から意表を突く攻めを行うなど、長期的かつ全体的な視野のもと手を進めることが可能となる。
大局観

その場所の勝負ではなく全体を見極める力のことですね。

大局観は年齢を重ねるごとに強くなる

一般的に将棋などの競技は若い人のほうが有利だとされています。それは手を考える力はもちろんですが、体力的なこともあるでしょう。

羽生名人は

将棋ではこの「大局観」が年齢を重ねるごとに強くなり進歩する。

と書かれています。「大局観」はベテランの棋士が若い棋士と戦う上で武器となるものなのです。

それはなぜか。「大局観」は具体的な手順を考えるのではなく、文字通り大局に立って考えること。

そのため年を重ねるごとに精度が上がるのです。若い時は体力もあり、たくさんの手を読みます。

ベテランになるとなかなかそうはいきません。手を絞り、自分の感覚に従い判断を下すのです。

リスクなくして成長なし

すぐに勝ち負けがはっきりする勝負より、最後までぎりぎり均衡が保たれている、どんな結果になるかわからない、そんな勝負が理想である。

羽生名人は実戦で想定外の手を指すことで知られています。またあらゆる戦型を指しこなすオールラウンダーとしても知られています。

目先の勝利にこだわるなら、得意戦型を決めたり、安全な手を指すことを選んでしまいそうです。

将棋の世界は、リスクをとらなければ棋士の成長は止まってしまう。

リスクを取らないことがリスクになるという考え方ですね。

本番で試すリスクをおかさない限り、プロ棋士としての成長はない。

いまここの勝利だけではなく、来年も再来年も勝ち続けようと思ったらリスクを取らなければ成長できないということですね。

まとめ

誰よりも勝ち続けてきた羽生名人。

その勝利の裏には長年培ってきた「大局観」がありました。ぼくは勝負の世界に生きる人間ではありませんが、仕事への判断など活かせることがあると思います。

一般の社会人にとっても年齢を重ねるごとに体力が落ちたりすることはありますが、それを判断力などで補うことがあるからです。

福山で名人戦が行われる今、多くの人に読んでいただきたい一冊です。

あわせて読みたい(スポンサーリンク)