ドラマや映画の影響もあり、歴史というのは常に関心が集まっています。
ただ、歴史上の事件について「陰謀論」のようなものを目にしてもやもやしたことはないでしょうか。
この本は気鋭の歴史研究者が「陰謀論」を取り上げられた本です。
陰謀論とはなにか
9月15日は関ヶ原の合戦が行われたということで、それにまつわる本を紹介しましょう。
この本の名前は『陰謀の日本中世史』。著者は新書『応仁の乱』でベストセラーを記録した中世史研究者の呉座勇一さん。
この本は陰謀論について取り上げられた本。
では、陰謀論とはなにか。
この本では、
「陰謀論」という言葉は新語なので、明確な定義はない。本書では、「特定の個人ないし組織があらかじめ仕組んだ筋書き通りに歴史が進行したという考え方」 と定義
しています。
歴史好きなかたなら、陰謀論について聞いたことがあるでしょう。
この本では日本史における陰謀論を研究者の立場から丹念に”つぶして”いったもの。
日本史における陰謀論とは
陰謀論として有名なのはなんといっても本能寺の変でしょう。
史実としては明智光秀が主君織田信長を討った事件ですが、その影響の大きさから数々の作家、歴史愛好家、民間研究者が参入しています。
「本能寺の変」のウィキペディアは説が多すぎですごいことになっています。
どうして陰謀論は人をひきつけるのか。
人はなぜ陰謀論を信じるのか。これは「因果関係の単純明快すぎる説明」 という陰謀論の特徴に負うところが大きい。
歴史上の出来事で史料が残っていればいいのですが、それらが失われていると検討するための史料がありません。
その謎を一気にわかりやすく解決しようとすると、推論に推論を重ねることになり、変な方向に着地するのでしょう。
この本を通して歴史学の手法を知ろう
さて、関ヶ原の戦いについてですが、この本を読んでこれまで知っていた知識が結構覆されました。
のちに江戸幕府が成立したことを知っているので、終始徳川家康が情勢を読み、リードしていたようなイメージでしたが、実際は窮地に陥っていたとのこと。
豊臣秀頼を確保した西軍が「会津征伐は徳川家康の私戦である」と宣言したことで、家康が上杉景勝退治の大義名分とした「豊臣秀頼の支持」は失われた。討伐軍は豊臣〝正規軍〟の座から転落し、家康は窮地に陥ったのである。
家康が反徳川派を一網打尽にするためあえて隙きを見せたというのも典型的な陰謀論。
福島正則や山内一豊のエピソードで有名な「小山会議」も後世の創作説があります。
呉座勇一さんは
この本を通して、歴史学の手法をぜひ知ってほしいです。
と語っています。
呉座勇一さんの陰謀の日本中世史が面白かった。私たちは歴史上の出来事の結果を知ってるから、勝者が計算づくでうまくやったとする話になびきやすいけど、実際はそうでもない。双方がミスをするし、それが少ない方が勝者になる。あと、ほかの歴史家のことけちょんけちょんに言ってるのも面白かったw pic.twitter.com/EhP9kpjSmT
— らら (@rara_chan423) 2018年4月14日
まとめ
現代のわたしたちが歴史から学ぶ、というときは「物語」としての歴史から、ということが往々にしてあります。
ぼくは戦国時代が好きでよく調べていますが、当時の文書などは実に地味です。
歴史は華やかな部分だけ、スターだけ追いかけることはできません。
日本史に関する陰謀論を目にして、もやもやした思いを抱えていた人はぜひこの本を手にとってみてください。