少し前にたまたまネットで幕末の天狗党の乱を取り上げた作品があることを知りました。
しかも、著者が山田風太郎ということで、これは読まなければ!ということで読んでみました。
山田風太郎が描く天狗党
本作は幕末の水戸、天狗党をテーマにした山田風太郎の作品です。
山田風太郎といえば、忍法帖シリーズに代表される伝奇物で知られ、推理物、明治物、などでも根強い人気がある作家です。
天狗党、といっても幕末史に詳しくないと広く知られてはいないかもしれません。
しかし、本作やウィキペディアを読んでもらえればわかるように多くの血が流れた悲惨な事件でもあります。
ぼくも乱の名前はくらいは知っていたものの、どのような内容かは知らなかったので山田風太郎が天狗党の乱をテーマに本を書いていることを知って、すぐに読んでみようと思いました。
興味があったので、山田風太郎の『魔群の通過』買ってみた。幕末の水戸、天狗党をテーマにした作品。聞き語りの形式で天狗党について語られる。面白い。Kindleでしか手に入らないみたい。
— つぶあん@福山凡人ブロガー (@ttsubuan) 2018年12月29日
天狗党とはなにか
天狗党とはなにか。
その流れを説明するとかなりの文章量となるため省くとして、ものすごく単純に書くと天狗党とは水戸で攘夷派として活動した藩士たちのことです。
天狗党はいまの茨城県で攘夷のために挙兵して、敗れたあと京都で朝廷や水戸家出身の一橋慶喜に攘夷の志を訴えるため、一転西上します。
そして最終的には越前で投降し、処刑されます。
天狗党と反対派閥の対立軸がありつつ、幕末の政局の混沌もあり、水戸には内戦の風が吹き荒れました。
日本史でも合戦は数限りないほどありましたが、水戸藩は同じ藩内で壮絶な内戦を繰り広げたという意味で他に例がないのです。
魔群の通過の内容
本作は天狗党の生き残りによる聞き語り(インタビュー)形式になっています。
語り部は天狗党の主要人物の一人、武田耕雲斎の四男、武田猛です。
武田猛は天狗党の乱のとき、武田源五郎という名で15歳でした。
この源五郎の目を通して、天狗党の乱、その後の壮絶な西上の過程が描かれます。
形式としては明治なってから、敦賀の郷土史会の招きに応じ、源五郎が語るという形。
元治元年、私は武田源五郎と申し、数えで十五歳でござりました。
当然ながら、天狗党の一員ということで、当然見方としては一面にならざるをえない部分はあります。
ただ、あれだけの凄惨なことになった事件を小説とはいえ、内側から見ることができるのはとても興味深いことです。
作者の山田風太郎は実際に天狗党の歩んだ道を取材しています。
作品執筆時でも車でも通行できず、まったく同じ道をたどることはできないなど、取材の苦労も少し書かれています。
現在でも人が踏み入れない地域を含んでいることを考えると、兵糧や大砲、怪我人も抱えた天狗党の道中が苦労に満ちたものかわかります。
そんな中、関東から信州を超えて、北陸にいたることがいかに大変か、考えただけでも大変です。
乱に参加しているとはいえ、源五郎は15歳なので少年ならではの目でこの事件を語っています。
天狗党の面々は約1000人にもおよび、群像劇というよりは源五郎の目を通して、時期的にも幕府が崩壊する直前の、まさに激動の時代を描いているともいえますね。
この争いがあったから、水戸藩は幕末の着火点になりながら明治維新に人材を出すことができませんでした。
ある意味時代の脚光が当たる明治維新の影でこういう事件が起きていたとは本当に驚きました。
まとめ
Amazonでは新品の取り扱いはありませんが、Kindleなら300円代で読むことができます。
重たい話ですが、読んでみる価値はあります。
これだけの争い、行軍、復讐の話があまり知られていないということは歴史の流れを感じずにはいられません。
久住真也さんの『王政復古』は幕末の流れがわかるおすすめ本です!