今回のコラボ書評は逢坂冬馬『同士少女よ、敵を撃て』を取り上げます。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評は筒井康隆さんの『残像に口紅を』でした。
【コラボ書評】究極の実験小説:筒井康隆『残像に口紅を』 – つぶログ書店
残像に口紅を(筒井康隆)を若者はどう読んだのだろうか | 坂本、脱藩中。
コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店

今回の本は逢坂冬馬著『同志少女よ、敵を撃て』

今回のコラボ書評の課題本は逢坂冬馬さんの『同志少女よ、敵を撃て』です。
今回は私つぶあんが本を選びました。
『同志少女よ、敵を撃て』のあらすじはこちら。
第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。独ソ戦、女性だけの狙撃小隊がたどる生と死。
独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために……。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵”とは?
同志少女よ、敵を撃て | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
この本を読んで感じたこと
著者の逢坂冬馬さんは本作がデビュー作で、第11回アガサ・クリスティ賞大賞を受賞し、直木賞の候補にもなりました。
最近でここまで評価された新人作家がいたかな?というくらい高い評価を受けている方です。
アガサ・クリスティ賞の評者たちも満点をつけるほど激賞しています。
読み終わってみると、その選評のなかにあった戦争冒険小説というのが言い得て妙だなと思います。
戦争冒険小説の要素だけではなく主人公セラフィマの復讐も絡んできてぐいぐい読ませる書きぶりはこれがデビュー作とは思えないほど。
一気に読ませる筆力もさることながら、デビュー作の題材に選ぶのが“独ソ戦を戦う狙撃手”というのもすごい。
独ソ戦の描写がリアル
セラフィマは村が焼き討ちにあい、狙撃訓練学校に参加することになります。
この訓練学校では狙撃手を育成するためすごく厳しい訓練が課されます。
ここで厳しい訓練に耐えているからこそ後半の戦場での描写に説得力が出ているのかなと感じましたね。
セラフィマと同じく狙撃小隊に参加することになる少女たちも個性豊かなメンバーばかり。
それは広大な国土を持つソ連そのものなのかもしれません。
本作では、セラフィマたち狙撃手をはじめ、民間人もふくめてさまざまな女性たちが戦争に翻弄される姿が描かれます。
戦争(独ソ戦)をメインにしながら、扱っているテーマ自体は現代的な問題も絡めているなと感じました。
戦争にスポットを当てつつ、現代的なテーマを取り入れるには絶好の題材だったかもしれません。
解説によるとソ連は第二次世界大戦に100万人以上の女性を動員したとのこと。
最近では新書の『独ソ戦』や『戦争は女の顔をしていない』がベストセラーになったりしているのでこの本に書いてある舞台を受け入れる土壌ができきたという状況があったかも。
まとめ
人類史に残るほどの凄まじい戦いを主題にした骨太の作品。
すごく読み応えがあり、じっくり楽しみめます。
後半スターリングラード攻防戦が始まったあたりから一気に。
ぜひ読んでみてください。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店
さかもとさんの書評はこちらから
この作品をさかもとさんはどう読んだのでしょう。
書評はこちらから。
同士少女よ敵を撃て(逢坂冬馬)戦争がどう人間を変えるかが書かれている | 坂本、脱藩中。