毎月連載のコラボ書評。
今回のテーマ本はディーリア・オーエンズさんの『ザリガニの鳴くところ』です。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評は早瀬耕の『グレート・ギャツビーを追え!』でした。
【コラボ書評】加藤シゲアケによる直木賞候補作!『オルタネート』 | つぶログ書店 近未来の恋の形?データで恋は成就するのか「オルタネート」加藤シゲアキ | 坂本、脱藩中。コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 |

今回のテーマ本はディーリア・オーエンズ著『ザリガニの鳴くところ』
今回のテーマ本はディーリア・オーエンズの『ザリガニの鳴くところ』です。
今回は私つぶあんが本を選びました。
こちらが『ザリガニの鳴くところ』のあらすじ。
ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見された。人々は真っ先に、「湿地の少女」と呼ばれているカイアを疑う。6歳のときからたったひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか? 不気味な殺人事件の顛末と少女の成長が絡み合う長篇
著者のディーリア・オーエンズさんは69歳で初の小説とのこと。
この小説は「2019年にアメリカで一番売れたミステリー」とのこと。
部数はなんと500万部超え!
この本を読んで感じたこと
彼らが生きる世界では、ハトであってもタカと同じように戦わなければならないことが多いのだ。
本作を手取ってみて、まず不思議なのは『ザリガニの鳴くところ』というタイトルですよね。
これはザリガニの鳴くところ=“茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きてる場所”という意味です。
主人公は“湿地の少女”と呼ばれるカイア。
湿地帯で1人で暮らすことになりますが、
物語が現在のパートと過去のパートが行き来する構成になっており、最初は飲み込むのに時間がかかりましたが、読んでいるうちに慣れてきました。
現在(といっても設定は1969年)で湿地帯の見張り台で事件が起こります。
ストーリーの要素としてこのミステリーは重要なんですが、それよりも大きなウェイト占めているのはカイアの成長です。
初めは料理もボートの運転ができなかったのが、街で魚を売り力強く生きていきます。
そして、湿地帯で出会ったテイトの影響でついには湿地帯の生物に関する本を出版するまでに。
本書はミステリーではあるけど、それは物語の味付けであって、本当は失われてしまった土着のアメリカを描きたかったのでは?と思うほど。
読む前はもっとガッツリミステリーかと思っていたので最初はちょっと意外な感じでした。
しかし、読み進めていくうちにどんどんカイアのことを応援する気持ちになり、その成長がどんどん楽しみになっていきました。
ぼくの知らないアメリカの風景
あと、感じたのはこの本にはぼくの知らないアメリカが描かれているな、ということですね。
アメリカというと、日本で目にするのはロサンゼルス、ニューヨークなどを見ることが多いですよね。
それが原風景なのか、何かはわからないけどアメリカではイメージが浮かんでくる感じなのでしょう。
“アメリカで一番売れた本”というのもおぼろげにというか、何となくわかるような気がします。
アメリカ人は住んではいなくてもこの作品に描かれる風景はイメージが浮かびやすいものなんでしょうね。
たとえば日本人は「Always三丁目の夕日」の世界観に郷愁を誘われる感じで、場面の設定は異なるが、アメリカで感じるのも似てるのかもしれないと思います。
日本人なら住んでいない県でもテレビなどで目にすることがあり、なんとなくイメージが浮かびますよね。
それと同じ感じ。
本当にローカルなアメリカが描かれます。
そういう部分がカイアが魚を売りに行く街の光景、事件を捜査する保安官たちのやり取り。
カイアが偏見で差別を受けますが、そういうこともある意味では当時では“日常”であったのかもしれません。
これらに加えて著者は動物学者だけに動物の描写や自然の描写はとても素晴らしいです。
おわりに
ミステリーとして犯人を探す読み進めていくのもありですが、自然や動物、そして何よりカイアの成長が面白い。
ただ単にストーリーを追いかけるだけの作品だけではなくいろいろな読み方だができます。
ぜひ、読んでみてください。
さかもとさんの書評
さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。
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