毎月連載のコラボ書評。
今回のテーマ本は佐藤究さんの『テスカトリポカ』です。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評は桐野夏生さんの『インドラネット』でした。
【コラボ書評】ダメダメな主人公に共感?実は愛の物語:桐野夏生『インドラネット』 – つぶログ書店
「インドラネット」桐野夏生:カンボジアに行った気になって読めた一冊 | 坂本、脱藩中。
コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店

今回のテーマ本は佐藤究著『テスカトリポカ』
今回のテーマ本は佐藤究さんの『テスカトリポカ』です。
今回はさかもとさんが本を選んでくれました。
こちらが『テスカトリポカ』のあらすじです。
選考委員大激論! 今一番ヤバいエンターテインメント!
メキシコで麻薬密売組織の抗争があり、組織を牛耳るカサソラ四兄弟のうち三人は殺された。生き残った三男のバルミロは、追手から逃れて海を渡りインドネシアのジャカルタに潜伏、その地の裏社会で麻薬により身を持ち崩した日本人医師・末永と出会う。バルミロと末永は日本に渡り、川崎でならず者たちを集めて「心臓密売」ビジネスを立ち上げる。一方、麻薬組織から逃れて日本にやってきたメキシコ人の母と日本人の父の間に生まれた少年コシモは公的な教育をほとんど受けないまま育ち、重大事件を起こして少年院へと送られる。やがて、アステカの神々に導かれるように、バルミロとコシモは邂逅する。
佐藤究『テスカトリポカ』特設サイト | カドブン
「テスカトリポカ」はなじみのない言葉ですが、『テスカトリポカ』特設サイトによると以下のような説明です。
【テスカトリポカとは】
多神教のアステカ王国において信仰されていた強大な神の一人。
佐藤究『テスカトリポカ』特設サイト | カドブン
ナワトル語で「煙を吐く鏡」を意味し、闇を支配するとされる。毎年5月の乾季、この神をたたえる盛大な儀式がとりおこなわれ、生贄として少年の心臓が捧げられた、と伝えられている。アステカ王国では「夜と風」(ヨワリ・エエカトル)、「われらは彼の奴隷」(ティトラカワン)とも呼ばれていた。
直木賞を受賞したクライムノベル
本作は第165回直木賞受賞作です。
重厚なエンタメで、闇の世界とかなじみのない文化も登場しますが、それを置いても読む価値はあるな、と思いましたね。
このコラボ書評では自分が普段手に取らない本に挑戦する機会が出てきます。
この『テスカトリポカ』がまさにそう。
最初の3分の1あたりを過ぎるまではメキシコであったり、あちこちに話が飛び入り込むのに時間がかかりました。
アステカの信仰のことなどあまり知識がことがたくさん出てきたので、そういうところはちょっと難しがったですかね。
あとは本作では登場人物たちの身元を隠すため、スペイン語などのあだ名で呼ぶので頭の中で結びつける必要があります。
ただ、3分の1を過ぎ、半分に差しかかると一気に物語が動き出し、後半は駆け抜けるように読み終わりました。
思えば、日本人にとってメキシコでの麻薬戦争についてあまり知識はないし、世界観を説明するのに時間がかかる。
登場人物たちの背景を描くのもそうですよね。
それがあるから後半の物語の展開がより効いてくる気がします。
この本を読んで感じたこと
読んでいて感じたのは人はこんなにも簡単に犯罪に関わってしまうのかということ。
幸いにもそういう方面とは関わりなく生きているが、一歩踏み外せば…という怖さを感じました。
特にメキシコの麻薬カルテルの怖さは、有無を言わさぬものがあります。
ニュースとしてはメキシコの麻薬戦争について見たことがありました。
遠い海の向こうの出来事があれよあれよという間に日本で暮らす人々が巻き込まれていく。
本作のキーとなるのは闇の臓器移植です。
ちょっと翻訳モノの小説を読んでいるような感覚もありました。
人が死に、設定も怖かったりする面があり、そういうのが苦手な人はちょっとダメかも。
世界観もダークというか、マフィア映画のような重い感じがあり、人も死ぬ。
そこはかとなく映画「アウトレイジ」が加わっている感じもありましたね。
暴力描写の意味で、ですね。
公式の特設サイトに「クライムノベル」というキーワードがありましたが、まさにそのイメージです。
まとめ
読み終わってズン、と来るような重さのある作品でした。
麻薬戦争や臓器移植の問題も取り込み、重厚な面白さを構築しているように感じました。
ぜひ読んでみてください。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店
さかもとさんの書評
さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。
さかもとさんの書評はこちらから。
テスカトリポカ:佐藤究が2021年で多分個人的に一番ヤバかった本になる | 坂本、脱藩中。