信長の戦争 by 藤本正行:戦国時代を変えた男の真相

書評

7月23日に広島ぶろがー会に参加してきました。バスで広島に行ったときはそごうの紀伊国屋書店に行くのですが、ぶらぶらしているといい本を見つけました。久しぶりに夢中になって読んだ本です。織田信長の戦争について書かれています。

信長公記とはなにか

信長公記(しんちょうこうき、のぶながこうき)とは戦国時代に書かれた織田信長の伝記です。

著者は太田牛一です。

その特徴は織田信長の半生をドキュメンタリーのような手法で書いていることで、史料価値も高いものです。

本書はその信長公記から信長の生涯の戦争を読み解こうという趣旨なのです。

そのためにまず信長公記と著者太田牛一の執筆方法から本が始まります。

ここが面白い!

信長公記の数ある伝本からその異同を解き明かし、いつ書かれたものかを明らかにします。

また、太田牛一がカードシステムによって本を書いていたと推理し、どの部分がそうであるかを解説しています。

この部分が非常にスリリング。研究書でありながら、推理小説のような感じで読めます。

信長の戦い

この本はいまから10年以上前の本ながら最近の本と比べても見劣りしません。

それは信長公記という基本史料を丹念に読み込み、事実を明らかにしているからでしょう。

信長の生涯は伝説に彩られています。

かつては桶狭間の奇襲、姉川の合戦、長篠の合戦の三段撃ちなどが定説とされていました。

これらの合戦の様相は少しずつ変わってきています。

個人的に面白かったのは姉川の合戦の部分。

浅井・朝倉軍が決戦に及んだ理由です。簡単に言うと浅井長政は朝倉の援軍がいる間に戦局を有利に持ち込んでおきたかったということです。

そもそも浅井長政が織田信長を裏切ったのは朝倉義景の調略によるもので、これは戦国最大の調略であると評価しています。

朝倉義景に信長のような決断力があれば戦国史は変わっていたのかもしれません。

信長はなぜ信長なのか

前から不思議だったのはなぜ信長は信長になり得たのかということです。

なんだか禅問答のようですが、どういう要因があって信長が天下を取るほどの勢力を持ったのかという疑問です。

この本を読んで感じたのはチャンスと見るや全力を傾ける勇気があったからではないかと思います。

信長が生涯で乾坤一擲の大勝負に出たのはそれほど多くありません。

そのほとんどは根回しをし、勝利できる状況を作ってから戦いに臨んでいます。

それまでの戦国の戦いの様相を変えてしまったのが信長という人物です。

つまり、相手より多い兵力と物量で相手を圧倒し勝利を得るのが定石です。

Googleの登場によりインターネットの状況が様変わりしたように、戦国時代は信長の登場によって変化することを迫られたようです。

まとめ

少し前の本ですが、圧倒的におすすめです。

戦国時代が好きな人はどこかに引っかかりがあるのではないでしょうか。

信長公記の成立から信長の戦争にいたるまでまとめ上げた名著だと思います。

ぜひ、読んでみてください!

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