毎月連載のコラボ書評。
今回のテーマ本は阿部和重さんの『ブラックチェンバーミュージック』です。
毎月連載のコラボ書評
このブログでは、ブログ「坂本、脱藩中。」のさかもとみきさんと毎月コラボしている書評を書いています。
前回のコラボ書評は辻村深月さんの『琥珀の夏』でした。
【コラボ書評】30年後に判明する罪と罰:辻村深月『琥珀の夏』 | つぶログ書店
子どもの心を思い出し親子の関わりを再考させられるミステリー「琥珀の夏」辻村深月 | 坂本、脱藩中。
コラボ書評とは2人のブロガーが同じ本を読み、感想をお互いに書くという内容です。
ぼくはさかもとさんにいろいろ相談をしたり、Twitterで交流をしていました。話の流れで「コラボしたいね」という流れになり、お互いに本好きということもあり書評を書きあうというスタイルになりました。
面白いのは同じ本を読み合っていても、人によってこうも感想が違うのかという点がわかる点です。
特にこのコラボ書評は、男女で本の捉え方が違う点も面白い点だと思います。
- 過去のコラボ書評はこちらから。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店

今回のテーマ本は阿部和重著『ブラック・チェンバー・ミュージック』
今回のテーマ本は阿部和重さんの『ブラック・チェンバー・ミュージック』です。
今回は私、さかもとさんが本を選びました。
こちらが『ブラック・チェンバー・ミュージック』のあらすじです。
落ちぶれた映画監督の前に突然現れた北の女密使。
出会うはずのない二人が、国家を揺るがす〈禁断の事実〉を追う。いまから話す内容を決して口外してはならない――大麻取締法違反で起訴され、初監督作品はお蔵入り、四十を前にキャリアを失い派遣仕事で糊口をしのぐ横口健二に舞い込んできたのは、一冊の映画雑誌を手に入れるという謎の「極秘任務」だった。
横口は北朝鮮からの”名前のない女”とともに、禁断の世界に足を踏み入れていく。一触即発のリアルな国際情勢を
ブラック・チェンバー・ミュージック | 毎日新聞出版
背景にくりひろげられる
スリルと〈愛〉の物語。
この本を読んで感じたこと
阿部和重さんの小説を本コラボ書評で取り上げるのは初めてです。
ぼくが阿部和重さんの本を読むのは伊坂幸太郎さんとの共著『キャプテンサンダーボルト』を読んで以来で、数年ぶりです。
前に読んだ阿部さんの作品が伊坂さんとの共作なのでそれに引きづられてか、この作品も”伊坂作品っぽさ”を感じました。
会話の面白さとか、スマホの機種名(iPhone SEなど)を毎回書く、伏線回収などそういう部分で。
でも、安心を。
阿部さんは純文学作家という印象をこれまで持っていましたが、この作品は”エンタメ”。
エンタメに徹しているのでストーリーを楽しみながら読むことができます。
読む前は純文学の作家というイメージだったので読み進めるのに時間がかかるような印象を持っていました。
そして、まず本を開いて二段組の構成になっていることに驚きました。
物語は、元映画監督の横口健二が昔仕事で関わったヤクザ、沢田から映画監督アルフレット・ヒッチコックに関する評論の著者を探すように依頼されるところから始まります。
一体なぜ、そんなものを探す必要があるのか?と思っているうちに逃亡劇にもなり、恋愛にもなり、飽きさせることなく展開していきます。
あらすじにもある通り、横口と行動をともにすることになる“ハナコ”(仮の名)は北朝鮮から来た女性。
メインの横口のパートの間に北朝鮮と韓国の関係者の接触が描かれるなど
それでいて物語の構造自体はシンプルです。
横口が最初に依頼された仕事はヒッチコックの評論を探すことですが、ヒッチコックの作品でイメージしたのは「北北西に進路を取れ」です。
「北北西に進路を取れ」はスパイもののスリラーです。
すごく簡単に言うと巻き込まれ系のストーリー。
話の筋などかなり違いますが、物語のキーとなるのが“ヒッチコック”なので、案外意識されているのかもしれません。
あとは感じたのは、会話の面白さ。
横口と沢田の会話は漫才のようでもあり、タランティーノの映画の雑談のシーンのようでもある。
『ブラック・チェンバー・ミュージック』を読了された皆様、作中に登場する映画評論「アルフレッド・ヒッチコック試論」の全文が『文學界』に掲載されます。小説とあわせて読んでいただけると幸いに存じます。よろしくお願いいたします。
— 阿部和重 (@abekazushige) July 30, 2021
文學界(2021年9月号) https://t.co/sSP83AnLUN @amazonJPより
▲ちなみに本作のキーになる評論「アルフレッド・ヒッチコック試論」は『文學界』で読むことができるそう。
こういう仕掛けは面白いですね!
まとめ
上下二段組で500ページ近くの大作。
でも、さすがのリーダビリティで物語が動き出すとあっという間に読み終えることができました。
面白い物語を読みたい人にすすめられます。
毎月連載のコラボ書評まとめ【つぶあんとさかもとみきさんの書評】 | つぶログ書店
さかもとさんの書評
さかもとさんはこの本をどう読んだのでしょう。
さかもとさんの書評はこちらから。
まさか新潟が出てくるなんて!「ブラック・チェンバー・ミュージック」阿部和重 | 坂本、脱藩中。